がんは遺伝子から治せるか 広がるゲノム医療、投薬に至るまでの壁も
がんの原因となる遺伝子(ゲノム)の異常な変化を見つけ、その人のがんに効く薬で治療をするゲノム医療が、少しずつ広がっている。ただ、治療薬にたどりつける割合は1割に満たず、認知度もまだ低い。
患者のがん組織や血液を使い、がん細胞の100種類以上の遺伝子の変異を解析できる検査は「がんゲノムプロファイリング検査(がん遺伝子パネル検査)」と呼ばれる。費用は56万円で、2019年6月に公的医療保険が適用された。自己負担3割の人でも多くは所得などに応じて支払う額がさらに低くなる。利用者は年々増加し、22年度は2万人超が受けた。
検査の課題の一つは、検査を受けても、治療に結びつく割合が少ないことだ。
厚生労働省の集計によると、保険適用から3年間に実施されたパネル検査約3万例のうち、治療薬の選択肢が示されたのは44・5%。実際に治療薬が使われたのは全体の9・4%にとどまる。
がんゲノムプロファイリング検査(がん遺伝子パネル検査)の流れ
患者の検体を検査会社に送り、戻ってきた遺伝情報を、主治医やカウンセラーら多職種でつくるエキスパートパネルという専門家会議で解釈、治療方針を決め、治療をする。遺伝子の変異がわかれば、効果が期待できる治療薬を見つけることができる。対象は、乳がんや胃がんなどの固形がんの場合は、標準治療が終わったか、終了する見込みの人。または、もともと標準治療がない希少がんの人。検査は、全国のがんゲノム医療中核拠点病院、同拠点病院、同連携病院の計263カ所で受けられる。
なぜなのか。検査を受ける時…