ノーベル平和賞受賞団体代表 「武器を使っても、法の支配守らねば」

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聞き手=藤原学思
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 戦時下のウクライナにおいて、「平和」とは何を意味するのでしょうか。ロシアによる戦争犯罪を記録し、2022年にノーベル平和賞を受賞したウクライナの人権団体「市民自由センター(CCL)」のオレクサンドラ・マトビチュク代表(40)に20日、キーウ市内で話を聞きました。

 ――きょう(2月20日)は、14年にロシアがウクライナ南部クリミアの占領を始めた日です。それから約10年。ウクライナ社会はいま、正しい方向に進んでいますか。

 人びとが自由や自国、人間の尊厳のために戦っているというのは、正しい方向だと思います。戦争は非人道的なものです。しかし、それは私たちが選んだものではなく、ロシアの一方的な侵略です。だからこそ、私たちは国や生命を守らなければならないのです。

「武器を置いても、平和は訪れない」

 ――ノーベル平和賞授賞式のスピーチが印象的でした。「ウクライナの人びとは世界の誰よりも平和を望んでいる。だが、攻撃を受けている側が武器を置いても、平和が訪れることはない。それは平和ではなく、占領だ」と。「平和」をどのように定義しますか。

 安定した平和が意味するものは、暴力のおそれなく、長期的な視野を持って暮らせることです。いまはウクライナでは、安全な場所はどこにもありません。一日の計画を立てることができないのです。今朝のように、空襲警報が鳴るのですから。

 ――あなたが他の共同創設者と共にCCLをつくったのは07年です。その頃と比べて、「平和」の定義には変化がありましたか。

 ほとんど同じだと思います。「暴力」は様々な形で起こりうるからです。

 「ロシアの占領はよくない。ただ、争いはやめよう。ウクライナにも戦闘をやめるよう提案しよう。領土をあげてもいいじゃないか」と言う人がいますが、占領されている状態は、平和とは言えません。

 占領は戦争の一形態であり、そこでは暴力が続いています。強制移送、拷問、性的暴力、アイデンティティーの否定、強制的な養子縁組。こういったことが起きるのが、占領されるということです。

「法の支配」の重要性

 ――ウクライナの「勝利」をどう位置づけますか。

 それは単に、国際秩序の回復…

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この記事を書いた人
藤原学思
ロンドン支局長
専門・関心分野
ウクライナ情勢、英国政治、偽情報、陰謀論
ウクライナ情勢

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