「パーパス経営」を産業僧が〝翻訳〟すると 企業の存在意義を考える
僧侶・松本紹圭=寄稿
Re:Ron連載「松本紹圭の抜苦与楽」 第6回
旅人と3人のれんが職人の寓話(ぐうわ)があります。
れんがを積む3人と出会った旅人が、何をしているかと尋ねたら三者三様の答えが返ってきたというお話。聞いたことがある人も多いかもしれません。
産業僧としていろいろな企業を訪ねていると、似たような場面に出くわすことがあります。
とあるモノづくりの会社を訪ねたときのこと。ちょうど各部署の中期経営計画を作成する時期だったため、マネジャーたちは皆、ひたすらパソコンモニターとにらめっこをしていました。私が「どんなお仕事をしているのですか?」と尋ねると、いろんな答えが返ってきました。
ある人は、「上司の指示で社内アンケートの報告書を作成しているんです。細かくて神経がすり減るし、もうこりごりだよ」と答えました。
別の人は、「私の仕事は、部下の意識を高めて部署の生産性を上げること。大変だけど、これで家族を養えるのだから、ありがたいことです」と。
もう一人は、こう答えました。「私たちは、会社の技術力を結集して世界に感動を届けているんです。人々の未来の希望となる仕事にかかわれて、とても光栄です」
仕事に臨む、目的意識の違い…