第1回国民の怒り生んだ「賭け」 エリート大統領が「嫌われ者」になるまで
パリ=宋光祐
すべての始まりは6月9日、欧州連合(EU)議会選で、右翼政党「国民連合(RN)」に歴史的大敗を喫したことだった。
「未来のために団結して抵抗するフランスを信じる」
マクロン大統領はその日の夜、国民に向けてこう語りかけ、国民議会(下院)の解散を表明した。誰もが予想し得ないことだった。
【連載】嫌われたエリート なぜ大統領は追い込まれたか
欧州議会選の敗北を受け、マクロン大統領は総選挙という「賭け」に出た。フランス史上最年少で大統領となったマクロン氏はなぜ、ここまで嫌われ、そして追い込まれたのか。
一枚のモノクロ写真がある。
マクロン氏が国民への演説の直前、エリゼ宮(大統領府)で政権幹部に自らの決断を伝えたとみられる会議の様子を写したものだ。大統領府の専属カメラマンがSNSに投稿した。
壮麗なシャンデリアがぶら下がる広間のテーブルで、両手で口を覆いうつろな目をする内相、渋い表情でメモを取る下院議長……。中央に座るアタル首相は腕を組み、怒ったような目をしている。視線の先にはマクロン氏がいる。
「私の辞任と引き換えに解散…