ふるさと肱川、思い出はいつも美しく 酒店経営者を襲った水害と幸運
戸田拓
2018年7月の西日本豪雨は、愛媛でも南予を中心に土砂崩れやダム放流による河川氾濫(はんらん)など多くの被害をもたらした。
大洲市内で酒店「酒乃さわだ」を営む大洲市の澤田典康さん(52)も被災者の一人だ。同7月7日、自宅も店も市内を流れる肱川からあふれた水につかり、どれほどの被害になるのか、想像もつかなかった。
それでも、「今夜は徹夜」と腹を決め、近隣市のホームセンターへデッキブラシやホースを買いに出かけた。
「今はやるべきことをやるしかない」。自宅の床上浸水は3度目。何をすべきかはわかっていた。
「床上に達していた水が徐々に引いて床下になる瞬間を見計らって、家の中に流れ込んでいた泥などを一気にかき出せ。引き水が汚れをまとめてもっていく」。近所の古老から学んだ知恵だ。教えはそのときも有効だった。
だが深夜、自宅で黙々と作業しながら、脳裏に「店の再建は無理かな」との思いがよぎった。店が水害に遭うのは初めてだった。
わずかな水の高さが…
酒屋の次男に生まれた…