性暴力の加害者にどう対峙するか 謝罪、訴訟……回復につながるのは

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編集委員・大久保真紀
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 性暴力の被害者は、加害者に事実を認め、謝罪してもらいたいとの思いを強くもつ。しかし、その実現には多くの壁がある。被害者はどのように向き合っていけばいいのか。

 トラウマ論に詳しい大阪人間科学大学特任教授で、精神科医の岩井圭司さん(62)は、加害者が自分の行為を認めることが、被害者にとっては、回復のための大きな一歩になりうるとする。

 その上で、「事実を認め、謝罪しても、対話なき謝罪は口先だけだと被害者が受け止める可能性もある。そういう意味でも対話は重要だ」と語る。

 しかし、性暴力と家庭内暴力(DV)では被害者と加害者の対話が難しいのも現実だ。

 「被害者にとって最悪なのは孤立無援感。そこからの回復を考え、加害者との対話が困難ならば、周囲との対話を考えるべきだ」

 被害者にとってはまず、何も言わずに話を聞いてくれる人の存在が必要だが、同じような経験をした人たちが集まる自助グループなども、被害者が「自分はひとりではない」と思える場になる。「自分は生きててもいい」という安心感を持つ場にもなり、その安心感が、次の対話につながり、回復の道を開くことになると岩井さんは指摘する。

「加害者の謝罪は必要なステップ」

 弁護士の小竹広子さん(51)は「加害者が謝罪するということは、加害者がやってはいけないことをしたと双方が合意したことになり、被害者が自分の抱える課題を手放し、次に進んでいくためには必要なステップだ」と説明する。

 しかし、性暴力事案は刑事事件として立件されないことが珍しくない。加害者の対応に納得できず、民事訴訟で闘うことを選択する被害者もいる。

 小竹さんは裁判を起こす意義…

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この記事を書いた人
大久保真紀
編集委員
専門・関心分野
子ども虐待、性暴力、戦争と平和など