第3回ナイキ追う他社 「半信半疑」から始まった試行錯誤の成否はパリで

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辻隆徳
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 米スポーツ用品大手ナイキによって「エアズーム マックスフライ」が世に送り出されたのは2021年4月のことだった。その夏の東京オリンピック(五輪)で、この短距離用の厚底スパイクを履いた選手たちが好記録を連発した事実は、他の選手やコーチはもちろん、他社の作り手側にも衝撃をもたらした。

 「短距離用スパイクについては長年、(薄い靴底で)地面とのダイレクトな接地感を大事にする選手が多かった。厚底スパイクが浸透するのかどうか。現場の開発サイドも私も、正直、半信半疑だった」

 ミズノのコンペティションスポーツマーケティング部でスパイクを担当する市岡敬介が、東京五輪の開幕直前の心境を明かす。

 16年リオデジャネイロ五輪以降、まずは長距離やマラソンで厚底靴の普及が進んだ。市岡にすれば、それは「想定内」だったという。一方、短距離のスパイクは、長距離用のそれ以上に「薄底」が追求されてきた歴史がある。軽量化も含め、どれだけ選手が足元に違和感を覚えず、気持ちよく走れるか。各メーカーはそこに注力してきた。

 厚底スパイクは、そうした考え方を根底から覆すような代物だった。

 「出遅れたという自覚はある…

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