「まさ兄」に見せたかった手帳 「温かい雨」浴び、黒い雨訴訟に参加

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矢代正晶
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聞きたかったこと 広島

 「ようやく手にした手帳。まさ兄に見せたかった」

 広島市安佐北区の松本長次郎さん(84)が「黒い雨」を浴びたのは、5歳の時だった。1945年8月6日、原爆が落ちた爆心地から約20キロ離れた旧安野村(現・安芸太田町)にいた。

 「変わった雲じゃのう」。松本さんは自宅近くの芋畑で、南東の空にキノコ雲がわき上がるのを見上げていた。色が白、黒、赤と変わっていくのが見えた。

 家に帰ると、雨が降り出した。土砂降りになり、好奇心から、裸になって外に飛び出して遊んだ。「温かい雨で、まるでシャワーみたいじゃった」。雨水にぬれた肌が、うっすらと黒くなった。「なんでじゃろうとは思ったが……」

 その後、「黒い雨」のことを思い出すことはなかった。18歳でトラック運転手になり、全国各地を忙しく駆け回る日々を過ごした。

「雨の影響じゃろう」…還暦迎え体調崩す

 体調に異変はなかったが、気になることと言えば、10代後半から時折、髪の毛がまだらに抜けるようになったことだった。だが、半年ほどでまた生えてきた。

 医者からは「ストレス」と言…

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