「同じ土から生まれる多様性、飽きない」 現代美術家が見た珠洲焼

上田真由美
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 ナイジェリア出身の現代美術家、オトボン・ンカンガさん(49)が27日、石川県の珠洲市陶芸センターを訪れ、珠洲焼の制作過程を見学した。ンカンガさんは、金沢21世紀美術館(金沢市)で、11月から始まる開館20周年記念企画展に向けた作品を制作中。珠洲焼作家の中島大河さん(29)に空間を演出する作品の一部を制作してもらう方向で、打ち合わせもした。

 ンカンガさんはベルギーのアントワープを拠点に活動しており、「土地」に関心を寄せる作品で知られる。この日、一つ一つ色合いの違う珠洲焼のつぼや皿を確かめるように手にとり、「多様性があるのがいいですね」と話すと、中島さんが「同じ原材料でも、濃度や焼き方によってこうなります」と説明した。

 ンカンガさんは「珠洲焼は灰によって表れる様々なトーンがあり、見ていて本当に飽きない。職人の技の多様性に関心をもっていて、土からできた焼き物がそれぞれ違って見えるように、多様性を見せられるような作品をつくりたい」と話した。

 ンカンガさんは26日には羽咋市の「山崎麻織物工房」で能登上布、七尾市の「高澤ろうそく店」で和ろうそくの制作についても学んだ。

 その過程で、能登半島地震の被災状況も見聞きしたといい、「破壊されてしまった家などを見て痛ましく思い、お慰めしたい気持ちでいっぱい」と述べ、「とにかく何かをつくってみる、アートには絶えず自分をこの場所ではなく、違う場所に飛ばしてくれるイマジネーションがある。そういうアートの力をいま、最大限に生かしたい」と話した。

 「人類の長い歴史においては、何回も災害のような悲劇が起きてきた。そんなとき、人々はいまの自分とは違うイマジネーションに心を飛ばすことによって、自分がいま生きていることを実感しながらどうやって次の生につなげていけばいいかということを考えてきた。アートは絶えず、そういう力を与え続けきたと思うのです」

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この記事を書いた人
上田真由美
金沢総局|能登駐在
専門・関心分野
民主主義、人口減少、日記など市井の記録を残す営み