小児がんの神経芽腫 1歳半以上は治りにくく ドラッグラグ・ロスも
神経芽腫は小児がんの一種で、腎臓の上にある副腎や、背骨に沿ってある交感神経節などから発生する。初期はほぼ無症状のため、診断時には骨や骨髄、肝臓などに転移していることが多い。転移した部位によって様々な症状が出る。
発症時の年齢が1歳半未満の場合は比較的よく治るが、1歳半以上では治りにくくなる。1歳半以上で、転移がある場合や遺伝子異常がある場合などは高リスクに分類され、日本で1年間に神経芽腫と診断される150人前後のうちの40~60%とされる。
国立成育医療研究センターの松本公一・小児がんセンター長によると、高リスクの患者が診断から5年後に病気が治って生存している割合は少しずつ向上しており、現在は40~50%という。
小児がんの治療では、欧米で使われている薬が日本では承認の遅れで使えないドラッグラグや、承認申請すらされないドラッグロスに直面することが多い。神経芽腫でも、生存率を高めるデータが報告されていた点滴薬「ジヌツキシマブ」は、欧米では2015年に承認されたが、日本は21年6月だった。この間、連載で紹介した岸部蹴さんのように、使えないまま亡くなったり、多額の費用をかけて海外で治療を受けたりする子どもがいた。また、欧米では高リスク患者の再発予防薬として使われている「イソトレチノイン」はまだ承認されていない。
国立がん研究センター中央病院の荒川歩(あらかわあゆむ)・小児腫瘍(しゅよう)科医長は、小児がんの治療薬でドラッグラグ・ロスが生まれていた理由として、患者が少ないため採算が取れない▽薬の開発は欧米の小規模なベンチャー企業が主力で、日本に支社がない▽欧米では、成人用の薬の開発時に小児用も原則開発することを法律で義務づけているが、日本にはそうした法律がなかった――ことを挙げる。
厚生労働省によると、23年…