市街地に出没、駆除か保護か州二分する論争 市民の力で共存の道へ

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伊藤恵里奈
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現場へ! クマ対策の最前線(5)

 クマが市街地に出没する問題は、実は日本だけではない。米国でも同様だ。

 米国にはアメリカクロクマ、ハイイログマ(グリズリー、ブラウンベア)、ホッキョクグマの3種が生息している。なかでも近年、都市部で問題になっているのが、クロクマだ。クマによるあつれきを減らし、共存の道を探るため、市民団体が日本より幅広く活動している。

 ニューヨーク市から車で1時間あまり。なだらかな丘陵地の先に「ウッドランズ野生生物保護区」の看板がみえてきた。

 1986年に創設されたニュージャージー州認可の野生動物のリハビリ施設だ。創設者で代表のトレイシー・リーバーさん(69)とクマ担当のスタッフ、ヘザー・フリーマンさん(39)が笑顔で出迎えてくれた。

 施設の中では、交通事故などで傷ついたリスやウサギが治療を受けていた。

 「年間2千頭以上の野生生物が持ち込まれる。全て無料で治療をして、野生に戻している」とリーバーさん。クマの受け入れは95年に始めて、これまで100頭以上の子グマを保護してきた。

 フリーマンさんは屋外にある広大な施設を指さし、「今は2頭のクロクマの子どもがいる。なるべく人になれさせない環境で18カ月になるまで育て、州政府の指導のもとで野生に返す」と話す。

 追跡調査を実施し、キャンプ場に放置されたゴミをあさりに人里に出てきてしまった1例を除くと、人間とトラブルをおこしたクマはほぼいないという。

 この約30年、試行錯誤しな…

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この記事を書いた人
伊藤恵里奈
盛岡総局
専門・関心分野
ジェンダー史、自然環境、映画、異文化