急拡大の大型外来魚コウライオヤニラミ、特定外来生物指定を要望
宮崎県の大淀川で見つかっている肉食性の大型外来魚「コウライオヤニラミ」について、輸入や放出に厳しい規制がかかる特定外来生物に指定するよう、県は環境省に要望した。急速に生息場所を広げている状況が学術調査で明らかになり、法律にもとづく強い対策を期待する。環境省も前向きに検討する方針。
コウライオヤニラミはスズキ目オヤニラミ科の淡水魚で、大きいものでは30センチほどになる。日本にはもともといないが、2017年に初めて都城市の大淀川支流で見つかった。観賞用に輸入したものが放たれたとみられる。
その後、繁殖し生息域を広げている様子が確認されていたが、京都大や北九州市立いのちのたび博物館が今年6月に公表した研究結果では、急速な生息域拡大の状況が明らかになった。水中に残る魚由来のDNA(環境DNA)から分布を推測する手法により、都城盆地内の本支流ほぼ全てに広がり、固有種を含めもともといるほかの魚が減っている状況が示された。
8月には県内水面漁場管理委員会が、大淀川での採取や持ち出し、県内の川への移動を禁止する指示を出した。県自然環境課は「今は大淀川だけの問題だが、同じことがほかの川でも起こらないとはいえない」。特定外来生物指定に向けて、10月21日には県から環境省に要望書を提出した。
外来生物法にもとづき特定外来生物に指定されれば、全国で飼育や輸入、譲渡や野外への放出が原則禁止される。県にとっても、調査や駆除に国の支援を得やすくなると期待する。
環境省外来生物対策室によると、コウライオヤニラミについては現在、特定外来生物に限らず幅広く生態系などに被害を及ぼすおそれのある外来種を選定する「生態系被害防止外来種リスト」の来年度末の改訂に合わせ、リストに加える方向で検討している。
この検討で使われる情報は特定外来生物の選定の際も活用することができる。コウライオヤニラミの特定外来生物指定に向けても「前向きに検討している」という。ただ、指定には学識者の意見聴取や社会的影響の検討、国際的な通報などの手続きを得る必要があり、実現時期は未定だ。
このため県では当面、内水面漁場管理委員会の指示の周知や現地への看板設置、ホームページでの啓発などに力を入れていきたいとしている。