不整脈に最新治療法、広島大病院が中四国で初導入 患者の負担軽減
加齢とともに脳卒中や心不全、認知症のリスクを高める「心房細動」の最新治療法を広島大学病院(広島市南区)が導入した。患者への負担も少なく、より安全な治療法といい、高齢化で患者が増える中で今後の普及が期待されている。
心房細動は不整脈の一種で、不整脈全体の3分の1を占める。心房細動になると、脳卒中や心不全のリスクが5倍、認知症のリスクが2倍程度増加すると言われている。
広島大病院循環器内科の中野由紀子教授のチームは9月19日、広島県内の心房細動患者2人に、従来の高周波ではなくパルス電圧を利用した「パルスフィールドアブレーション」という治療法を中四国地方で初めて実施した。その後、患者の経過は順調という。
心房細動は、左心房の肺静脈から出る電気刺激がスイッチとなり、心房の中で電気が高速回転を始めることで起きる。このため左心房と肺静脈を隔離し、悪い電気信号を閉じ込める必要がある。
これまでは、高周波(加熱)やクライオ(冷凍)といった熱を使うアブレーション(拡大肺静脈隔離法)の機器が主流となってきたが、9月1日からパルスフィールドアブレーションが保険適用となり、活用に道が開けた。高周波に匹敵するか、あるいはそれに取って代わるエネルギーだという。
この治療法は、熱を用いないことや、ターゲットとなる心筋のみに細胞死を引き起こせるため組織の炎症が軽減され、心臓周囲の臓器への影響が極めて少ないことが特徴だ。合併症のリスクが低減でき、所要時間も短縮されるため、患者への負担も少ないという。
中野教授は「心房細動が原因で介護が必要になっている人もいる。いろいろな弊害を起こしてしまうと健康寿命を損なってしまうし、実際の寿命も短くなる。なんとか治療していきたい」と話している。