第7回「心中」という言葉が隠す、命落とす子どもの声 韓国では呼び名変更

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甲斐江里子
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 親が自殺を図る際に子どもを殺す行為を、日本では「心中」と呼ぶことが多い。近松門左衛門作の人形浄瑠璃曽根崎心中」に代表されるような相愛の男女が合意して自殺する、という意味もある「心中」という言葉を使うことによって、子ども側の被害の深刻さが覆い隠されてきたとの批判もある。韓国では、同様の事件の呼び名を変えることで社会の意識を変えようという試みが続いている。

 「『同伴自殺』という言葉を使わないで下さい」。国際NGO「セーブ・ザ・チルドレン・コリア(SCK)」は2014年、こんな声明を出した。

 ソウル市内に住んでいた母子3人の無理心中事件が、韓国社会で話題になった年だ。こうした行為は韓国では長年、「同伴自殺」と呼ばれ、この事件でも連日報道で使われた。事件後、SCKが韓国メディアの過去の報道を調べると、親が未成年の子どもを殺害した後に自殺した事件の多くも「同伴自殺」と表現されていた。

 SCK内では「この言葉が使われることで、親が子どもの生死を左右できるという誤った認識が広まってしまうのでは」という懸念の声が上がり、声明の発表に至った。声明では「明らかな殺人」という強い単語も使われた。SCKの政策提言チームリーダー姜美廷(カンミジョン)さんは「子どもは親の所有物ではなく、親が子どもの生死を決めてはいけない」と強く訴える。

 当初、声明に対する社会の反応は冷ややかだったという。「親には『同伴自殺』以外に選択肢がなかった」という親への同情や、「たかが言葉。大した問題ではない」という批判が寄せられた。SCKは「貧困や障害などいかなる理由があろうとも、親が子どもの命を奪う権利はない」「死にたいと思っていた子どもはほとんどいない。子ども目線で考えてほしい」と報道機関などに訴え続けた。

 地道な活動を続けた数年後…

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