無言館とデッサン館、通じる思いは 静岡県立美術館で初の展覧会
戦没画学生の作品を展示する美術館「無言館」と、若くして亡くなった画家のデッサンを集めた「信濃デッサン館」(いずれも長野県上田市)に焦点を当てた初の展覧会が、静岡県立美術館(静岡市駿河区)で開かれている。自ら企画した木下直之館長(70)は美術史家でもある。これまでと異なる視点で見てほしいと狙った対象は、展示した作品にとどまらない。
デッサン館は、村山槐多(かいた)や関根正二ら夭折(ようせつ)の画家の作品を集めて1979年に開館した(現在は「残照館」として再開)。一方、無言館は戦争で帰らぬ人となった画学生の作品を遺族から提供してもらって97年に誕生し、戦争と平和の象徴として全国から来館者がある。
いずれも窪島誠一郎氏のコレクションが元で、志半ばで最期を迎えた芸術家の作品とくくられるが、それ以外の共通項も、違いもある。今回の展示は、両館を生んだ窪島氏の視点にフォーカスして従来の見方を乗り越えようとした。展覧会の名は「無言館と、かつてありし信濃デッサン館 窪島誠一郎の眼」とした。
序章に加え六つのパートから成る展覧会の始まりは、戦没画学生の自画像だ。親の反対を押し切って美術の道に進んだ若者たちのまっすぐな視線と向き合う空間になっている。浜松出身の野末恒三や中村萬平など静岡ゆかりの作家5人の展示室もある。
無言館の収蔵品は「出征直前…