三菱UFJ銀行、行員の貸金庫窃盗で浮かぶ「抜け穴」と「窃盗手口」
三菱UFJ銀行が貸金庫の巨額窃盗事件を公表して3週間余り。同行は行員が無断で金庫を開けないよう「チェックをしていた」と主張しながら、詳しい状況を明かさず、貸金庫への信頼が失墜しつつある。行員は銀行側が保管する鍵を使っていたとみられ、現場への取材からは、窃盗がまかり通った「抜け穴」が浮かんできた。他行も決してひとごとではない。
「最初に発表を聞いたときは『あり得ない』と思った。でもね、よく考えると『盗めちゃう』状況が確かにありそうだ……」
そう打ち明けるのは、三菱UFJで支店長経験のある関係者だ。貸金庫は行員が無断で開けられない仕組みがあると思っていた。だが、現場へのヒアリングを重ねるうち、担当行員による犯罪を防ぎきれない「抜け穴」があった疑いが行内でも強まっているという。
三菱UFJは11月22日、貸金庫の管理責任者が2020年4月~今年10月、都内2支店で貸金庫内の資産を盗んでいたと発表。約60人分の金庫から盗んだ現金や貴金属などは時価十数億円にのぼるとされる。
同行は発表文で「顧客に無断で開けられない厳格な管理ルールを定め、第三者の定期チェックもしている」と強調した。だが、管理ルールや定期チェックの内容は「ノーコメント」(広報)とし、その後は沈黙を続けた。実際には行員が無断で金庫を開けていたうえに、複数の支店での犯行が長期にわたって見過ごされた。説明内容との食い違いはあまりに大きい。
そこで焦点となるのが「三つの疑問」だ。関係者らへの取材をもとに検証していく。
銀行保管の副鍵を悪用か
一つ目は、支店内の貸金庫室…