ある朝、玄関先でマルサに囲まれた 元脱税犯が語る「地獄」の始まり

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中野浩至
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 嫌いだろうがなんだろうが、納めなければならないのが税金です。不正に逃れた先には何が待っているのでしょうか。「脱税に走ったらどれだけ厳しい目に遭うのか知ってほしい」と脱税した当事者が取材に応じ、1年余りに及ぶ「地獄」を語りました。

いつか来るだろう、と思っていた

 神奈川県に住む佐野宗吾朗さん(39)が妻子と朝食を取っていると、玄関のインターホンが鳴った。2023年2月7日の午前8時ごろだった。

 「東京国税局の者です。開けてください」

 いつか来るだろう、と思っていた。だが、それがきょうなのか。信じられない気持ちでドアを開けた。

 引っ張り出され、家の壁に押しつけられるように、スーツ姿の男女10人ほどに囲まれた。

 「わかっているよな」。すごむ相手に思わず「わからない」と答えると、「令状が出ているから」。国税局のなかでも強制力を武器に脱税事件を手がける査察部(マルサ)による調査だった。

 控えていた別動の10人ほどが段ボールを持って自宅にどかどかと入っていくのが見えた。

 その後、査察官2人に挟まれる状態でタクシーの後部座席に乗せられた。自宅のある神奈川県内から、1時間半ほどかけて国税局のある東京・築地へ。

 悪夢のような1年が始まった。

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この記事を書いた人
中野浩至
東京社会部
専門・関心分野
税務、事件・事故