1枚ずつ、紙を破き…医学部生が知る痛み 震災「疑似喪失体験」授業

有料記事

編集委員・石橋英昭
[PR]

 ある日突然、大切な存在を失うとは、どういうことか――。医師をめざす学生たちに考えてもらう授業が1月21日、仙台市青葉区であった。東日本大震災で両親を亡くした女性による「疑似喪失体験」の講義だ。

 東北大医学部内の講堂に集まった約120人は、まず4色計12枚の紙を渡され、大切なもの、人、思い出を書き込んだ。家族や友人の名、打ち込んだ部活動、ぬいぐるみ……。

 演壇で高橋匡美さん(59)=塩釜市=が話し始める。2011年2月27日、石巻市南浜町で暮らす母親・佐藤博子さんと、仙台で一緒にショッピングをした時のこと。イタリア料理店でランチをし、匡美さんの息子や、留守番をしていた父親悟さんの話で盛り上がった。夕方、JRの駅で別れた。

 社交的で、美人で、少しドジだった母親。

 「あれが最後と分かっていたら、話したいことはもっとたくさんあったのに……」

「大切な人、ものとお別れしなくてはなりません」

 講義をプロデュースする金菱…

この記事は有料記事です。残り1392文字有料会員になると続きをお読みいただけます。

※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません

この記事を書いた人
石橋英昭
編集委員|仙台駐在
専門・関心分野
東日本大震災、在日外国人、戦争の記憶
東日本大震災

東日本大震災

2011年3月11日午後2時46分に三陸沖を震源とするM9.0の大地震が発生しました。被災地の声や復興の現状、原発事故の影響、防災のあり方など、最新ニュースをお届けします。[もっと見る]