(社説)政倫審 幕引きの儀式ではない
政治資金規正法の再改正などと併せ、年内に裏金問題への区切りをつけ、来夏の参院選に臨みたいというのが、自民党の思惑だろう。各議員が国会で説明責任を果たすのは当然だが、裏金システムができた経緯や目的など、核心部分の解明を置き去りに、幕引きを図ることは許されない。
衆参両院の政治倫理審査会で、先の通常国会では全会一致の要請にもかかわらず、出席に応じなかった安倍派40人、二階派2人の計42人の弁明が順次、行われている。
きのうは、「5人衆」と呼ばれた安倍派幹部のうち、事務総長経験がないことを理由に唯一、出席していなかった萩生田光一元政調会長が弁明を行った。
萩生田氏の政治資金収支報告書への不記載額は、現職議員で3番目に多い計2728万円にのぼる。
派閥の政治資金パーティー券のノルマを超えた売り上げが還付されることは知っていたが、会計処理は秘書任せで、疑惑が報じられるまで、不記載の事実は知らなかったと説明。その資金は、国会議員や有識者らとの会合費や、海外出張時の政務活動費に充て、私的流用や不正な支出はなかったと述べた。
安倍元首相の最側近と目されていたが、安倍氏の指示でいったん廃止された還流が、安倍氏の死後、復活した経緯についても、当時の幹部協議に参加しておらず、相談もされなかったので、「知りうる立場にない」と語った。
結局、安倍派の組織的な裏金づくりは、誰がいつ何のために始めたのか、還流の再開は誰が主導したのかといった、多くの疑問は残されたままである。
そもそも政倫審での発言は偽証罪に問われることもなく、真相究明の場としては限界がある。いつまでも疑惑を引きずったままでは、政治への信頼回復はおぼつかない。証人喚問や参考人招致といった形で、改めて安倍派の幹部らに説明を求め、実態に迫るのが国会の役割だ。
今回、42人が一転して政倫審出席を決めたのは、先の衆院選での与党過半数割れという厳しい民意を受け、さらなるけじめを求める声に抗しきれなくなったためだろう。
選挙を控える参院側がまず、全員出席で足並みをそろえ、衆院がそれに続いた。ただ、通り一遍の1回きりの弁明で、幅広い納得が得られるかは疑問だ。また、衆院が全員公開に応じたのに対し、参院は多くが非公開を求めた。堂々と国民の前で語れないのなら、説明責任を果たしたことにはならない。