国際刑事司法・国際法が専門。2011年大阪大学大学院国際公共政策研究科博士前期課程修了(修士(国際公共政策))、2012年ライデン大学(オランダ)法学修士課程修了(LL.M.)、2015年大阪大学大学院法学研究科博士後期課程修了(博士(法学))、日本学術振興会特別研究員(SPD)(京都大学)、2019年ひょうご震災記念21世紀研究機構研究戦略センター主任研究員、2019年京都大学白眉プロジェクト特定助教、2020年から現職。著書に「国際刑事手続法の原理―国際協働におけるプレミスの特定」(信山社、2022)、「国際刑事手続法の体系―「プレミス理論」と一事不再理原則」(信山社、2020)。
シリアの反体制派に対する強制失踪や拷問は、2015年の「シーザー写真」で国際社会に知られるようになり、2022年には元看守がドイツで「人道に対する罪」で訴追され、有罪判決を受けています。これまでも、元収容者らの証言や絵から、27か所ほどもあ
「免責」と書くと、責任を免ずるように見えますが、これは誤訳で、国際法用語としては「(裁判権からの)免除」といいます。英語はimmunityで、「免疫」と同じ単語です。これは、責任それ自体がないという意味ではなく、いま、この国での裁判権(司法
犯罪容疑のかかった政治家を守ろうとして、刑事司法の取組みをバイアスだとして批判し議論をすり替える構造は、国内社会でも国際社会でも同じようです。 戦争犯罪などの中核犯罪についての容疑がある場合には逮捕状を出し、裁判をし罰するというシステムは
多くの意見書や申立てがあったので、もっと時間がかかる可能性もあると思っていましたが、予審裁判部裁判官の3名とその法律顧問とインターンの皆様には、大変な業務であったのだろうと想像します。 法と事実にしたがった業務を行っている国際公務員を脅すよ
世界的にインパクトのある事件ではありますが、パレスチナのすべてを否定するものでも、イスラエルのすべてを否定するものでもなく、あくまで個別の犯罪事件であることを理解すべきです。 今回のICC逮捕状が対象としているものを大別すると、デイフに関
イスラエルに対する批判をすべて反ユダヤ的として封じようとしていますが、その説明ではハマス軍事部門トップのデイフ氏により多くの訴因について逮捕状が出されていることが説明できません。 デイフに対する訴因は、10.7攻撃とその後の人質の扱いに関
当該条約は「一方の当事国が、個別の国または複数の国から攻撃を受け、戦争状態に陥った場合は、他方の当事国は国連憲章51条およびロシア連邦法および北朝鮮法に基づいて、利用可能な軍事および他の支援を遅滞なく提供する」ことを約束するものである(4条
アブエライシュ(Abuelaish)氏のコメントで興味深いと思ったのは、「憎まない」ことと、「責任を取らせる」ことは矛盾しないという立場であることです。ここで「説明責任」と訳されているのは、英語のAccountabilityという概念化と思
グテーレス事務総長が言及している戦争犯罪になる可能性とは、国際刑事裁判所(ICC)規程8条2項(b)(iii)でいう「国際連合憲章の下での人道的援助又は平和維持活動に係る要員、施設、物品、組織又は車両であって、武力紛争に関する国際法の下で文
国際刑事裁判所(ICC)規程8条2項(b)(iii)では「国際連合憲章の下での人道的援助又は平和維持活動に係る要員、施設、物品、組織又は車両であって、武力紛争に関する国際法の下で文民又は民用物に与えられる保護を受ける権利を有するものを故意に
LAWSに関する国際規則は、国連を中心に進められている途中ではあります。国連のギテレス事務総長は、2018年からLAWSを禁止する枠組みの必要性を強調し、2026年までには法的拘束力のある文書を採択することを勧告しています。この勧告に基づき
スーダンの事態は、国際刑事裁判所(ICC)によりジェノサイドの容疑が確認されている唯一の事態です。 国連安保理が2005年に付託しました。 記事にある、ジャンジャウィードとこれを支援した大統領アルバシールを含む当時のスーダン政府のメンバー
ジェノサイドという言葉は、その意味内容から必然的に、ある集団が別の集団を攻撃した、という分断構造を前提とします。ナチスドイツのホロコーストを適切に表現しようとして生み出された造語ですが、この言葉を使うことによるレッテル貼りと集団間の分断の固
領空侵犯があった9月23日の防衛大臣臨時記者会見によれば、フレアを撃ったのは航空自衛隊の北部方面隊の判断ということですが、なぜ撃ったのかについてははっきりしません。領空への侵入は1回目が13時ごろの1分間、2回目が15時半ごろの30秒間、3
ICCはそもそも、国連安保理の付託の場合を除いて、事件が発生した国、または被疑者の国籍国がICC規程締約国でなければならないという縛りがあります。(規程12条)。 他方で、本件のように、非締約国での迫害の結果、締約国に難民が移動している場合
詳細な状況が分かっていないので国際人道法違反を断定するには尚早ですが、関連するルールをあげておきます。 今回は、標的はヒズボラのメンバーであるので、特に文民(民間人)をターゲットにしたものとは言えなさそうです。では、戦闘員をターゲットにし
日本とタイの間の受刑者移送条約5条4項では、「移送国は、受入国に対し、次に掲げる情報又は文書を提供する」とし、(b)「刑期、刑の開始日及び終了日、刑を言い渡された者が既に刑に服した期間並びに拘禁の期間の短縮に関する情報」を提供する義務を負う
判例に基づく法的な整理は解説の通りで、意見が分かれているところだと思われますが、今回新たに追加されている可能性がある条件として、ロシア側によれば、事前に協議したうえでモンゴルとの「合意」があるという点も気になっています。 この合意の詳細は分
国の領土の上から宇宙までの空間は領空とよばれ、領域国の同意なく侵入することはできません。ただ、現在では民間の国際線の飛行機の路線は、すべて事前に登録される国際制度が構築されているため、いわゆる領空侵犯という問題は基本的には回避されています。
ゼレンスキー大統領は演説で何度も、今回の成果により「交換の蓄え(exchange fund)」ができつつあると述べています。これは、停戦交渉に入った場合の土地の交換の意味もあるといわれていますが、直近では捕虜の交換の頭数のことを指していると