極度に発達した筋繊維みたいな音。
そう、ムキムキぼっちそのひとだ。
*
ムキムキぼっちはどうやら、
おれらがスタートした数分遅れで清麻呂到着。
おれとほぼおんなじペースで
走ってたらしい。
*
ひとがひとと出会う。
ってのは、すげえ奇跡的なことだ。
おんなじ皇居を走ってるのに
たった数分違いでこのように
お互いがお互いの存在に、まったく気付かない。
*
あきらかに場違いなたとえだが、
たとえば。
もしおれが浪人してなかったら
にょうぼうと結婚することはなかった。
おれが違う大学に行ってたら。
星の数ほどある別のサークルに入ってたら。
卒業後、たまたま遊んだりしてなかったら。
そうやってどっかでひとつ、
ちょっとでも違ってたらまず
にょうぼうと出会うことはなかった。
そう、ムキムキとおれが
数分違いで皇居を走ってたように。
*
文学部特有のアレ、ですよ。
しゃらくさすぎて、
でっかいすかしっ屁が出そうだ。
にぎりっぺ!
*
そんな青臭い妄想をかき消す
ムキムキぼっちの眼力(めぢから)。
こりゃ油断したら、取り込まれる。
おれ全身が、あの筋肉の一部にされてしまう。
必死に、地面を踏ん張って、耐えた。
なんとか、耐え抜いた。
*
さて、ソクフォーでのチラリズム。
コレ(↓)。
午前7時。ゼンラぼっちがおもむろに
くばり出したゼッケン。
生地もプリントも、しっかりしてる。
ちょっと洗濯機まわしても
糸がほつれたり、文字が消えたりしない。
しかも、ぜんいんぶんの
安全ピンまでバッチリ用意。
こりゃ、すげえ。
イケメンでエロくておもろいうえに
神経のくばりかたが、ハンパねえ。
抱かれてもいい
といっしゅんおもったが、べつに
抱かれなくって、いい。
*
ただ、ちょっと待て、と。
ゼンラぼっちはさいきん
匂わせはじめてる。コトバの端々で。
ぼっち練は今回かぎりかも、と。
次があるかはわかりませんよ、と。
気分しだいでいつでもやめる、と。
アレだな。
「月例」って
口をすべらしちゃったばっかりに
逆にめんどくさくなっちゃったてのも
あんだろうな。邪推。
*
それでも、ゼッケンをつくる。
ぼっちどもを楽しませよう
いや、自らが前のめりに楽しんじゃおう。
たぶん、そんな感じで。
ぼっち練の参加者。
いままでMAXで4人だったのに、
ゼッケン、10枚も用意しちゃったり
なんかして。
「次からはコレ持参で」
と、継続も匂わせつつ。
まったく、シリメツだ。
*
とくに意図もないのに
土日月と8食ぐらい連続して
カレーを食っちゃう。
水曜になってようやく
おれカレーばっか食ってねって気づく。
そんな
なによりも筋道の妥当性を重んじる
ロジック命のおれには、
とうてい、理解できない所業。
*
ゼンラぼっちはたぶん
そういうひとなんだろう。
マジ、テッテーテキに
Carpe Diem(今を生きる)だ。
あと先なんか、これっぽちも考えてやしない。
いまが楽しけりゃ、それでハッピー。
マネ、できねえ。
抱かれてもいい
といっしゅんおもったが、べつに
抱かれなくって、いい。
*
ひとつ失敗したとおもったのは
おれのぼっち練ゼッケンのつけかた。
背面につけないと
武力として威容を示せない。
とくに整然と隊列を組むわけでもなく
めいめいが勝手なペースで
勝手な距離を走ってる。ぼっち練。
「あ、このゼッケン、さっきも見たぞ?」
「仲間うちにしちゃ、ひとりひとりすぎじゃね?」
「おれ、周回遅れにされたのか?」
「たしかさっきはムッキムキだったのに、マッチ棒に変体してたぞ?」
そうやって、皇居ジョガーどもを
総メダパニ状態におとしいれる。
には、背面必須だな。
化粧まわしみたいなとこにつけて
すんませんでしたっ。
*
もひとつだけ、つづく。