「双月千年世界 1;蒼天剣」
蒼天剣 第6部
蒼天剣・藍色録 2
晴奈の話、第331話。
解答。
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2.
「こんなお話がありますわ。
子猫の歩く先に、小さなパンがあります。子猫はそれを、喜んで食べてしまいます。
そして少し歩くと、またパンが。さらに歩くと、またパン。
そうしてパンをずっと食べ歩くうち、子猫は今にも崩れそうな橋の真ん中に誘い込まれ、立ち往生してしまう、……と」
フォルナの話を聞いたジュリアはのどの渇きを感じ、水を一気に飲み干す。
(20にも満たないこんな女の子が、よくこんな怖いことを考えるわね……)
「わたくしたちは恐らく、このお話の子猫の状態にありますわ。でなければバートさんの仰っていた通り、ウエストポートで襲撃を受けていたはず。なのにそれが無く、散発的な攻撃しかしてこない。……誘ってらっしゃるのでしょうね」
「敵が、わざと自分たちのところへと? 何のために?」
「確実に仕留めるためですわ――自分たちの目の前で、逃がすことなく、打ち損じることもなく、確実に死んでもらうために」
「どうしてそこまですると思うの? 考えすぎじゃない?」
フォルナも水を飲み、ジュリアの目をじっと見つめる。
「殺刹峰で兵の指導、司令に当たっているのはドミニク元大尉と言う方でしょう? その方は確実にカツミを仕留めるため、一ヶ月以上に渡って策を練り、作戦中もご自分で戦っていたと聞きました。
そこまでなさるような方が、自分の目の届かないような場所で、他人に任せきりになさるでしょうか?」
「むう……」
フォルナの言うことももっともである。四人はうなるしかなかった。
と、ここでシリンが手を挙げる。
「なー、フォルナ。結局偽者って、誰なん?
フェリオも、バートも、ナラサキさんも、エランも、ウチらも本物ってコトやったら、もう残ってるのフォルナしかおらへんやん」
「わたくしは本物ですわ。今までの話は、最後までだまし通さなければならないのが前提ですもの。なのにそれをばらしてしまうと言うのは、矛盾してしまうでしょう?」
「疑心暗鬼にさせて内側から瓦解させる、ってのも手だと思うけどね」
小鈴の指摘を受けたフォルナは、ふるふると首を振る。
「それなら、ノートは偽物でも構わないと言うことになりますわ。書かれていた内容は本物でしたのでしょう?」
「……ま、確かに」
「じゃあ、一体誰が偽者なの?」
異口同音に尋ねられ、フォルナはようやく真相を明かした。
「……わたくしがはっきり『本物』と言っていない人物が、一名いらっしゃいますわ。
それに、ジュリアさんとバートさんのところにも支援が来ているのに、わたくしのところに来ないと言うのは理屈に合いませんわ」
「その偽者がつまり、支援なわけだな」
そう言った晴奈は、首をかしげた。
「……ん? ……まさか」
「ええ、その通りですわ」
次の日情報収集に出かけた三班は、ある一名をわざと人通りの多い通りで引き離した。
「あ、あれ?」
彼はきょろきょろと辺りを見回す。
「セイナさーん? フォルナさーん? ど、どこ行っちゃったんですか?」
それを隠れて見ていた晴奈とフォルナは、他の班にそっと指示を送る。ジュリア班、バート班はそれに応え、静かに彼を監視し続ける。
「……」
晴奈たちの姿を探す振りをしていた彼は、突然無表情になる。そして、突然走り出した。
《追うわよ!》
ジュリアの指示に全員が従い、彼に気付かれないよう追いかけた。
彼は街外れまで走り、そこで立ち止まる。
「いらっしゃいますか、『インディゴ』様」
「はい、ここですけど」
彼のその声は、どう聞いても「彼」の声ではない。
「今日の報告です。奴ら、ヴァーチャスボックスで手に入れた情報を元に、捜査を始めたようです」
「なるほど。他には?」
「え? いえ、特には」
「あると思いますけど。……後ろ」
「……!」
彼が振り向いた先には、晴奈たち8人が立っていた。
「あなたは一体、誰ですの?」
彼――エランの顔と格好をしたその人物は、その顔をこわばらせた。
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解答。
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2.
「こんなお話がありますわ。
子猫の歩く先に、小さなパンがあります。子猫はそれを、喜んで食べてしまいます。
そして少し歩くと、またパンが。さらに歩くと、またパン。
そうしてパンをずっと食べ歩くうち、子猫は今にも崩れそうな橋の真ん中に誘い込まれ、立ち往生してしまう、……と」
フォルナの話を聞いたジュリアはのどの渇きを感じ、水を一気に飲み干す。
(20にも満たないこんな女の子が、よくこんな怖いことを考えるわね……)
「わたくしたちは恐らく、このお話の子猫の状態にありますわ。でなければバートさんの仰っていた通り、ウエストポートで襲撃を受けていたはず。なのにそれが無く、散発的な攻撃しかしてこない。……誘ってらっしゃるのでしょうね」
「敵が、わざと自分たちのところへと? 何のために?」
「確実に仕留めるためですわ――自分たちの目の前で、逃がすことなく、打ち損じることもなく、確実に死んでもらうために」
「どうしてそこまですると思うの? 考えすぎじゃない?」
フォルナも水を飲み、ジュリアの目をじっと見つめる。
「殺刹峰で兵の指導、司令に当たっているのはドミニク元大尉と言う方でしょう? その方は確実にカツミを仕留めるため、一ヶ月以上に渡って策を練り、作戦中もご自分で戦っていたと聞きました。
そこまでなさるような方が、自分の目の届かないような場所で、他人に任せきりになさるでしょうか?」
「むう……」
フォルナの言うことももっともである。四人はうなるしかなかった。
と、ここでシリンが手を挙げる。
「なー、フォルナ。結局偽者って、誰なん?
フェリオも、バートも、ナラサキさんも、エランも、ウチらも本物ってコトやったら、もう残ってるのフォルナしかおらへんやん」
「わたくしは本物ですわ。今までの話は、最後までだまし通さなければならないのが前提ですもの。なのにそれをばらしてしまうと言うのは、矛盾してしまうでしょう?」
「疑心暗鬼にさせて内側から瓦解させる、ってのも手だと思うけどね」
小鈴の指摘を受けたフォルナは、ふるふると首を振る。
「それなら、ノートは偽物でも構わないと言うことになりますわ。書かれていた内容は本物でしたのでしょう?」
「……ま、確かに」
「じゃあ、一体誰が偽者なの?」
異口同音に尋ねられ、フォルナはようやく真相を明かした。
「……わたくしがはっきり『本物』と言っていない人物が、一名いらっしゃいますわ。
それに、ジュリアさんとバートさんのところにも支援が来ているのに、わたくしのところに来ないと言うのは理屈に合いませんわ」
「その偽者がつまり、支援なわけだな」
そう言った晴奈は、首をかしげた。
「……ん? ……まさか」
「ええ、その通りですわ」
次の日情報収集に出かけた三班は、ある一名をわざと人通りの多い通りで引き離した。
「あ、あれ?」
彼はきょろきょろと辺りを見回す。
「セイナさーん? フォルナさーん? ど、どこ行っちゃったんですか?」
それを隠れて見ていた晴奈とフォルナは、他の班にそっと指示を送る。ジュリア班、バート班はそれに応え、静かに彼を監視し続ける。
「……」
晴奈たちの姿を探す振りをしていた彼は、突然無表情になる。そして、突然走り出した。
《追うわよ!》
ジュリアの指示に全員が従い、彼に気付かれないよう追いかけた。
彼は街外れまで走り、そこで立ち止まる。
「いらっしゃいますか、『インディゴ』様」
「はい、ここですけど」
彼のその声は、どう聞いても「彼」の声ではない。
「今日の報告です。奴ら、ヴァーチャスボックスで手に入れた情報を元に、捜査を始めたようです」
「なるほど。他には?」
「え? いえ、特には」
「あると思いますけど。……後ろ」
「……!」
彼が振り向いた先には、晴奈たち8人が立っていた。
「あなたは一体、誰ですの?」
彼――エランの顔と格好をしたその人物は、その顔をこわばらせた。
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