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4/08/2024

オッペンハイマー

 ひとりの原子物理学者として、研究、実験、実践したオッペンハイマーの複雑な生涯を描いた伝記映画。
 原爆の描かれ方/使われ方に対し 史実使われた側としては特別な感情、あまりに短絡的じゃないかと憤りの気持ちを抱くのは当然だけど、物語として描かれているのはそれそのものではなく作り出した彼自身の「生涯」。なので現状で本作が咎められるような要素はない。彼らが作りだしたものから生じた結果についての想いは、本編にも描かれていたと思う。

 後半はオッペンハイマーというより暴かれるストローズの物語といっても良さそう。私怨でそこまでするかいなって気もするけど、でもあの時代だったらおかしくないのかも。危うい時代の空気もまた核兵器同様今の時代にも通じるものがある。すべて地続き、と思うと背筋も寒い。

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原題:Oppenheimer 監督:クリストファー・ノーラン 2023年製作
出演:キリアン・マーフィ、ロバート・ダウニー・Jr、エミリー・ブラント、ケネス・ブラナー、ラミ・マレック、ケイシー・アフレック、フローレンス・ピュー、ジョシュ・ハートネット

@109シネマズプレミアム新宿 4/7鑑賞

1/26/2023

狼男アメリカン


 休暇でヨーロッパ旅行中にイギリスの村に立ち寄ったアメリカ人青年デヴィッドとジャックは村外れの湿地で謎の怪物に襲われる。ジャックはその場で無残に殺されるが傷を負ったまま意識を失ったデヴィッドが目覚めたのはロンドンの病室。手厚い治療を受けた彼は順調に回復していくが、ほどなく病室に死んだはずのジャックが死体の姿で目の前に現れ「お前は狼男になった」と告げる。満月の夜までになんとかしないと他人に危害を加えることになるから、早く自殺でもしたほうがいいとアドバイスされるもののデヴィッドは自分がイカレてしまったのかもと苦悩する。退院の日を迎え親しくなった看護師嬢の家に身を寄せたデヴィッドだったが、その満月の晩、彼の体に異変が起きる…。

 アカデミー賞の特殊メイク賞を獲得し、その後言わずとしれたマイケル・ジャクソンの「スリラー」のPVにも影響を与えた本作(監督はどちらもジョン・ランディス)、初見。
 当時CGはまだそれほどまで発達しておらずSFX技術もはしりだったといっていいかもしれないけれど、人から狼男への変身シーンは今見ても生々しいというかよくできてるなーとひたすら感心。(狼変身シーンといえばこれともう1本、『ハウリング』なんてのもあった)しかも骨格が伸びる変身シーンが痛そうで。
 物語のほうは村と狼男の関係やらちょっと釈然としないところもないわけではないけれどブラック・コメディ的に笑えるシーンも多々。それでも最後は意外なほど唐突に訪れるド直球悲劇的結末にも逆に驚いた。劇中にあふれる満月にちなんだ楽曲たちもさすがジョン・ランディス。捕物が繰り広げられるロンドンのピカデリーあたりの街中も懐かしい。

原題:An American Werewolf in London 監督:ジョン・ランディス 1981年製作
出演:デヴィッド・ノートン、グリフィン・ダン、ジェニー・アガター
@国立映画アーカイブ アカデミー・フィルム・アーカイブ映画コレクション
2023.01.24鑑賞

12/25/2022

男ありて

監督:丸山誠治 1955年製作
出演:志村喬、夏川静江、岡田茉莉子、藤木悠、三船敏郎
2023/12/25 @国立映画アーカイブ
東宝の90年 モダンと革新の映画史(2)

7/01/2022

女ばかりの夜

 1958年に売春禁止法が施行され、施設で更生を目指す女性たち。当人が努力して一般社会へと戻っていっても、彼女らが施設の出身だということ=元の素性がわかるだけでそれまで親身に接していた態度を手のひら返しに豹変させる世間。オフィシャルに商売にしてないだけでよほど自堕落でゲスな遊びをしているにもかかわらず、とがめられれば泣き落としで詫びるような女工たちやら時代や境遇を問わずにどこにでもいるんだろうなという腹立たしさだけが残ってしまった。ヒロインのまっすぐな視線が印象的。

監督:田中絹代 1961年製作
出演:原知佐子、北あけみ、淡島千景、香川京子、夏木陽介、浪花千栄子
@国立映画アーカイブ
東宝の90年 モダンと革新の映画史(1


4/10/2022

踊る大捜査線 THE MOVIE 湾岸署史上最悪の3日間

 公開時には映画館へ観に行くことはなかったけれど、90年代を代表する日本映画には違いないだろうと思うので観てきた。80年代特集で『私をスキーにつれてって』と同じような動機。テレビシリーズも見てなかったので本当に初見。

 うーん…良くも悪くもテレビドラマのノリなんですかね。それまでの刑事ドラマジャンルの映画にはあまり見かけなかったような軽さとテンポに、出世コースを行くエリート警部と現場の足で稼ぐ泥臭い刑事の信頼&厚い友情みたいな従来的なものが融合して大ヒットって感じだったのかしら。同時進行する副総監の誘拐事件とネットがらみの猟奇殺人事件、署内のコソ泥騒動は詰め込みすぎにもならずバランスよかったとは思うけど、つなぎのギャグが自分にはうっとうしかった。また、大怪我して大量出血してる人物を肩に担いで自分の車に乗っけてわざわざ署に向かうってどういう?救急車待った方がいいのでは??やら、その車を迎える湾岸署の面々がそろって敬礼って……まあいかにもドラマとはいえ…ねえ……などなどどんどん眉間にしわが。途中数々の小ギャグにウケてるお客もいたのでいいんだろーけど、内輪ウケの域を脱してないような気も。って思うのは自分が頭固いかひねくれてるだけなのだろうか。
 おもしろけりゃ、それでお客がどんどん呼べればいいのかもしれないけど、それまでのフジがらみでメガヒットになった作品って、自分が特集で見た中でも『南極物語』やら『私をスキーに〜』やらあって志のようなものやら時代ならではトレンディな感覚はそれなりに感じられた気がするのだけれど、なんか今回はどこからみてもテレビドラマのように思えて、映画館に集客するにはこーいうのしかないわけ?などなど、なんか先行き暗くね?と愚痴の一つもこぼしたくなるようなモヤモヤしたものが残ったのであった。

監督:本広克行 1998年製作
出演:織田裕二、柳葉敏郎、深津絵里、水野美紀、いかりや長介

@国立映画アーカイブ

10/10/2021

ONODA 一万夜を越えて

原題:ONODA 10000 nuits dans la jungle 監督:アルチュール・アラリ 2021年製作
出演:遠藤雄弥、津田寛治、仲野太賀、イッセー尾形、嶋田久作
TOHOシネマズ日比谷

3/27/2021

O氏の肖像

構成・製作・撮影:長野千秋 1969年
出演:大野一雄
@国立映画アーカイブ 戦後日本ドキュメンタリー映画再考

2/13/2016

オデッセイ

 ここまで明るいトーンのリドリー・スコットの映画って久しぶりに見た気がする。

(ちなみに「マッチスティック・メン」は未見)

のーてんきなディスコミュージックはさておき、自分の持てるありったけの知識をフル活用してポジティヴにことに対処するワトニーはたいしたヤツ。原作も読んでみたいな。

あの地球の家族との通信で船長のだんなが「アルバム見つけた」と彼女に見せてたのが何のアルバムだったのかすごーく気になるのでもう1回観にいきたいです。2D版で。

原題:The Martian  監督:リドリー・スコット 2015年製作
出演:マット・デーモン、ジェシカ・チャスティン、

12/05/2014

大人は判ってくれない

  いわずと知れたトリュフォー/レオーの名作。とはいえ、恥を忍んでいうと実はいままでちゃんと観たことがなかったのだ。ホントに恥。

 英語のタイトルはフランス語の直訳になるのかThe 400 blowsというのだそうで、英か米の密林コメント欄には「虐待ものと思わずにみて!」みたいなのがあって、そんな風に思っちゃう人もいるのかーと軽く驚いた。たしかにわたしたちが慣れ親しんでいる「大人は判ってくれない」という邦題だとそんなイメージってば浮かばないものね。というか、とても繊細で、見終わった今はより作品に合った、というかよく汲んだタイトル。

 12才のアントワンは、顔だけ見るといつでも文句ありげな悪たれ坊主に見えるけれど(そういう男の子ってどんなクラスにも1人はいたような)、よく作品のコピーで見かけるような劣等生とか悪ガキには思えなかったな。実際、家に帰ればざっくりとは言っても食事の支度やゴミ片付けなどおうちの手伝いや、宿題を済ませようとしていても母親に「そんなのしなくていいから早くお皿だして!」と怒られればちゃんと言うこと聞くしよっぽど従順。授業をサボったのだって金持ちの友だちに誘われたからだし、欠席の理由でウソついたのもはずみみたいなものだし、作文のバルザック盗作騒ぎだって原文を知らない自分がいうのも何だけど本当に盗作なのかなあというか、仮にそうだとしてもバルザックなんつうものにあの年頃で何かを感じて引用できちゃうだけでも大したものだと思うし、彼の詩心みたいなものは最初に立たされたときに読んだ俳句みたいな詩に、何も感じない先生の方が鈍感じゃないの?とか思ったり。人とちょっと変わった感じ方をしたり、文句ありげな表情にみえたり、些細なことがきっかけでレッテルを貼られてずっとそういう目でみられてしまうというのはよくあることで、いまだに「悪ガキ」風なコピーが並んでしまうアントワンにはちょっと同情してしまう。うーん、やっぱり今風にいえば判ってあげないってことは精神的な虐待に入るのだろーか。

 感化院から逃げ出して見に行った海で、その先にアントワンが何を見つめることになるのか、しばらくシリーズを続けてみてみようと思った所存。

 遠心力でぶーんっていう乗り物、遠い記憶で乗ったことがあるような気がするのだけど、気のせいかな。

原題:Les Quatre Cents Coups 監督:フランソワ・トリュフォー 1959年製作
出演:ジャン=ピエール・レオー、パトリック・オーフェー、アルベール・レミー、クレール・モーリエ


7/23/2014

大いなる沈黙へ グランド・シャルトルーズ修道院

祈る、ひたすら祈る姿が美しい。
彼らは今もこの世界のために祈り続けているのかな

『警察官の妻』の監督さんだったのだな。
多分クレジットで音が残ってたんじゃないかと思うけど、席を立つお客の喧騒にかき消されちゃってたのがとても残念。もっと余韻に浸りたかったな。空いてる時に見ればよかったよ

そんな岩波ホールの思い出

@岩波ホール


1/22/2014

オン・ザ・ロード

景色なんかの映像はよかったけど原作読んで見てる方にはそれぞれのイメージがあると思うのでやっぱりきびしいかな。特にディーンは全っ然違うと思ったし、悪くはないけどメリールーも自分の中じゃ違う。素直に見れれば気にならないのかも知れないけども。

一応プロは買っちゃったんだけど、でも役名表記のクレジットにまでサル/ケルアックとかディーン/ニールとかいちいちふってあるのは余計な親切だと思った。初稿は実名で書かかれてたというのにあわせたのかもしれないけど、でなけりゃお客がそれぞれ調べて学習すればよきことと思ふ。 

@下高井戸シネマ

8/09/2013

おとなのけんか

  ヤスミナ・レザによる戯曲『Le Dieu du carnage (英題:God of Carnage)の映画化作品。クラスメイトの子供同士のけんかで相手を棒でぶってケガをさせた子の親が先方宅を訪ねて和解案を練るうちに、ああだこうだとすったもんだの口論が激論、ゲロ騒動(?!)にまで発展するというほぼ密室劇コメディ。

 一見和やかに始まってさっくり解決しそうな話し合いの場が、時間が経つにつれそれぞれの親の一癖も二癖もある「素」がかいまみえてきてどんどん険悪に。話を切り上げられるタイミングは幾度もあって、端から見てればそろそろやめといたほうが…って思うのだけど、絡みたくなるのはこういう人たちの「サガ」というものなんですかね。その裏で子供同士はというとしっかり仲直りしてる風なのもちょっとほほえましかったり。

 さすが4人のキャストの芝居が絶妙でした。ポランスキーの舞台もの映画化作品は文芸ものの『仕返し』も楽しめたけど、やっぱり面白いですね。豪快なゲロリーノ場面はともかくとして、このキャストの舞台も実現可能であればぜひ観てみたいものです。

原題:Carnage  監督:ロマン・ポランスキー
出演:ジョディ・フォスター、ケイト・ウィンスレット、クリストフ・ヴァルツ、ジョン・C・ライリー
製作国:フランス、ドイツ、スペイン、ポーランド… とのことですがこのキャストでもってフランス映画やドイツ映画…と思って観るお客はいないと思うので、ここではアメリカ映画のタグに入れておきます。

2/21/2010

男のいない女たち

  昨年(2009年)のヴェネチア映画祭で銀獅子賞を受賞した作品で、音楽を坂本龍一が担当したのも話題に。

 1953年、モサデク首相が打ち出した石油生産国有化政策への英米の外圧に対するデモ活動のニュースがラジオから伝えられるなか、ムニスは心に熱い力がわき上がるのを感じていた。だが兄のアミールは彼女がラジオを聞くことも外出も許さず、その日やってくる求婚者に会うようにと一方的に言いつける。しばらくしてムニスの元を親友のファエゼが訪ねてくる。ファエゼは密かにアミールのことを慕っていたが、ふたりが目を離したすきにムニスは家の屋上から身を投げてしまった。

 テヘランの娼館で女主人の言いなりのまま客を取り続けていたザリンはある日娼館を抜けだし、町外れの果実園に続く水路でばったりと倒れてしまう。彼女を発見したのは果樹園の館を買い取ったばかりのファクリ。夫である将軍にただ従うだけの生活をやめて窮地の文化人たちとつきあいながら、果樹園で新しい生活を始めようとした矢先のことだった。果樹園にはやがてファエゼもひょんなことから出入りするようになり共同生活を営むようになった3人と、そして不思議なことに埋葬が済んでから息を吹き返しモサデク支持の活動に身を投じることになったムニスだったが、世の中ではCIAの陰謀による反モサデクのクーデターが起ころうとしていた。

 イランの抑圧された社会の中で葛藤しながら立ち上がる女性を描くというとマフマルバフ姉妹の作品などを連想するけれど、こちらも女性監督の作品。ただご本人がイラン生まれのニューヨーク在住ということが多少なりとも影響しているのか、男性の相手をさせられる娼婦の少女の描写や公衆浴場での女性たちのヌードなど大胆な映像が映し出されるのはイスラム圏の作品ではありえないでしょうね。

 もともとはアーティストで映像作家であったというネシャット監督初の長編劇映画とのことですが、随所にみられる美しい構図が印象に残ります。ちょっと調べてみると元は4人の女性たちについて独立した短編があって本作はそれを統合した形になっているようなのですけれど、一編の詩のようにまとまっていたと思います。でも個々の女性たちのキャラがそれぞれ際立っていて個別の本編ストーリーもみてみたいなあと思ったり。

英題:Women Without Men 監督:シリン・ネシャット 2009年製作
出演:Naved Akhavan, Mina Azarian, Bijan Daneshmand, Rahi Daneshmand
第2回恵比寿映像祭上映作品
2010.02.18~28 @ 東京都写真美術館

2/18/2008

牡牛座 レーニンの肖像

 昔同じタイトルで作品あったんじゃなかったっけと思っていたら2001年の旧作でした。なぜに今公開? やっぱし去年のカラマーゾフ・ブームとか効いているのでしょうかね。いくら西洋かぶれの自分でもこの辺のロシア近代史はあんましよく分かっていないので正直難解でした。だけど比喩がたくさん使われているんだろうなとは思いました。でも一緒に見ていたお客さんの中にはちゃんとセリフで笑ってる人がいて、かなり尊敬してしました。恐るべし。

 これを見た1週間後くらいに教育テレビでそれこそカラマーゾフを新訳した亀山郁夫さんがロシアに渡り大統領選に絡めて文化人に話を聞くという番組があったんですが、そこでソクーロフが話してたロシア史の輪廻のようなことが興味深かったです。それみてから映画を観てたらもうちょっと理解度もちがったかも。

霞のかかったようなソクーロフのカメラはすごくきれい。

英題:Telets 監督:アレクサンドル・ソクーロフ

12/24/2007

俺たちフィギュアスケーター

 半年以上分の期待に胸をふくらませてとっとと見てきた本作ですが、やー期待通りのバカ映画でした♪ さすがMTV制作。ストーリーの詳細はいちいち説明するのもめんどーなので割愛。とりあえずウィル・フェレルのすげー腹ほかマジなスケートなんぞ忘れてありえないバカっぷりを楽しんだもの勝ちです。しかしこのようなバカ映画にちゃんと元or現役プロ・スケーターの面々がちゃんと協力しているところにアメリカのスケート協会の懐の深さを感じたり(…ホントか)。佐藤由香さんや伊奈京子さんの顔も見えたほか、サーシャ・コーエンまで?って彼女はプロに転向したのか?? 女優志望だったはずのナンシーも出てきたことだしこれでトーニャ・ハーディングでも出てきたらすごいなーと思ったけど、そこまで悪乗りはしてなかったですね。ま、お話自体がじゅーぶん悪乗りはしてたんでどうこうは言いませんけども。面白かったでーす。満足。まんせー


8/26/2007

『陸に上がった軍艦』『TOKKO-特攻-』

  最近は以前よりもドキュメンタリー作品の一般劇場での公開もポピュラーではありますが、今年の夏は第二次大戦を描いたものがいつにもまして目立って話題になっていた気が。正月興行の硫黄島関連の書籍ブームから昨今の情勢など感心を呼ぶ要因は多かったのかも知れないけれど、某米国のように年がら年中どこかに軍隊送り込んでなんかやっている国とは違って、日本は実体験としての戦争の記憶はどんどん風化していく一方といえばそう。もちろん自国が戦火に包まれることもなければ、またそれぞれの大事な人がどこかの戦場に送られることがないことはそれはそれでよいと思うけれど、かつての戦争の記憶が過去のものして忘れ去られたり、戦争を知らない世代に過去に起きた事実が極端な解釈に歪曲されて伝えられるようなことは避けなければいけません。直接的間接的問わず戦渦に巻き込まれた多くの人たちがつらい思いをしてきて、でもそれは自分たちだけでなく戦争に携わった国々すべてが共通して抱えている痛い記憶であるということと、そんなことは二度と繰り返してはいけないんだということを後々まで伝え、認識していかなくちゃいけないこと。だから、やっぱりこういった当事者の人々の声を伝える映像はできるだけ多くの人に触ることはよいことだと思います。


●『陸に上がった軍艦』

英題:The Battleship on the Ground 監督:山本保博 
原案脚本:新藤兼人 2007年製作
出演:蟹江一平、滝藤賢一、三浦影虎、鈴木雄一郎 ドラマ/ドキュメンタリー

 徴兵を免れられると思っていたのに戦争も終わりにさしかかり若い兵隊がどんどん戦死していったために30代にして海軍の新兵にとられた新藤兼人監督。ある程度社会生活を積んでいた監督の同期の桜たちはこの戦争の行く末も感づいていたのに、年若い上官に朝から晩まで非人道的かつ非効率的な訓練を受け、ことあるごとに棒っきれで痛めつけられては“根性”を注入されるという過酷な軍隊生活を送る。若い同期たちが潜水艦の攻撃で一夜にして何百人も命を落としたり、日に日に激しくなる敵機来襲で身近にある死をイヤでも感じながら、結局一度も軍艦には乗ることなく終戦を迎えた新藤さんが語るむなしさであったり喪失感であったり、同時に強く感じられる安堵感。今の世の中にこういうことが起こったらどうなのかなーと思ったり。きっと精神論にかこつけた弱者へのいじめみたいなことは倍増して繰り返されるのではないでしょうか。戦争以前に人の問題というか、なんというか。新藤さんの語りの部分とドラマ部分の融合が見事。


●『TOKKO-特攻-』

英題:Wings of Defeat 監督:リサ・モリモト  2007年製作
(ドキュメンタリー)

 身内に特攻隊員がいることを知った日系アメリカ人の監督がたどる足跡。人間ってどこまで残酷になれるのかと思うのも戦争だけど、どんな鬼畜にみえても誰だって心の弱さや優しさは持っていて(まれにnatural bornもいるのかもですが、でもそういう人たちってホントの戦争の時にはどうなのだろう?)決して散りたくて散っていったわけではないのだ、ということをここでも感じる一本。実際に特攻隊員として訓練を受け参加したご老人たちの今も毅然とした姿が心に残ります。真摯なものを感じる作りだっただけに途中のアニメ挿入部分はなんで?って感じでちと残念でした。

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