負けヒロインが、市民権を得た。
運命の人には寄り添う相手が居た女。
いつか結ばれると信じていたら知らん女が出てきた女。
一度結ばれたのに離れた結果二度と結びつかなくなった女――。
《負けヒロイン》。
勝利するヒロインの裏で恋愛に負け、葛藤や苦悩やどうにも届かない恋心を見せて滅びていくサブヒロインにそういった言葉をつけるようになって長い時を経た。
Yahooが負けヒロインとかいう単語を使って世間に広めてからもう4年経ったしもうその記事は消えている。何故消えている?
が、今年に関して言えばこの《負けヒロイン》という言葉をよく耳にしただろう。
『負けヒロインが多すぎる!』。
今年の夏にアニメ化されて人気になってメチャメチャ売れた結果、このライトノベルがすごいの各部門上位独占(ただしメインヒロインだけお隣の天使様の椎名真昼に負けて2位)という話題性からオチまで何から何まで完璧な結果に終わった作品が、オタク界を揺るがしていた。
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なんならガガガ文庫という大本すら揺るがしている。
そして売れすぎて豊橋市とコラボして市役所とかにも負けヒロインの姿が描かれたものが用意された。本当に負けヒロインが豊橋市の市民権を物理的に得ているレベルで売れたし話題になった。流石にちょっと売れ過ぎじゃない?
あとバズりすぎてTwitterで負けヒロインを検索するとこの作品の話題しか出ないという2次被害に陥っている。割と笑えない。
無論、負けヒロインということで、ガガガ文庫より1巻が出たときに一度ネタにした。
1巻はヒロインが負ける光景に出会い続けるところも多く、負けた女たちの滅びる姿にちょっとしたはしゃぎを得た。
……が、そこまでである。
この物語は、負けた少女たちが強くなって前を向いて進み始める光の物語。
だが自分は、負けて苦しんでどん底に沈んだ女の美しい滅びの姿を見て喜び悦ぶ割とタチの悪い闇の人間。
闇と光は相容れない存在。求める滅びは2巻以降にはあまりなかった*1。
この記事は、創作で好きになった女の多くが負ける筆者が今年(2024年)出会った、あるいは動きがあった作品にいた負けヒロインを始めとする強めの弱いヒロインたちを取り上げ、今年最も弱かったヒロインを主観で決める記事である。
記事の性質上、ノミネートされた理由である展開の紹介やあらすじなどを多分に含むためネタバレは多く存在しているし、そもそもこの記事に紹介された時点でひどい目に遭うことがほぼ確定してしまっている。そこは予めご了承ください。
これまでのクソザコの系譜はこちら。
- 選外の少女たち
- 好きな子の親友に密かに迫られている
- 今さらですが、幼なじみを好きになってしまいました
- 2.5次元の誘惑(リリサ)
- 恋したので配信してみた
- ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか
- 総評/このヒロインが弱い! 2024
選外の少女たち
遠野あきら(わたし、二番目の彼女でいいから。)
毎年本記事でこの世の終わりやらずっとひどい方の二番目などと称して紹介している『わたし、二番目の彼女でいいから。』
今年紹介するのは京都編になって過去を精算して新しい生活を始めた主人公が、京都で付き合い始めた現状一番目の女こと遠野あきら。
もうちょっとだけこのままでいさせて。それが間違った望みでも。
早坂さん、橘さん、宮前を“二番目の彼女”として付き合い始めた桐島。だけど、こんなの茶番だと誰もが分かってた。少しだけ大人ぶった俺たちには、それでも手放せない感情があるだけで、実のところ何にも変わっちゃいない。
そんなある日、遠野は偶然、桐島の昔の恋人の正体に気づいてしまい……。
誰もが静かな破綻を予感しながら。
誰もが見て見ぬふりをして。
無情に季節だけが進み、物語はクリスマスを迎える。
原作はもう終わりに終わっていて、詳細は省くがこの7巻の最後の最後に一番目ですらなくなりそうになってしまった。
桐島の過去を知ってしまった彼女と、彼女を突き放す選択を選ぼうとする桐島。
完結まであと2巻と告知され、この世の終わりの本当の終わりが近づいてきた。
……が、今年出たのはこの1冊のみ。*2
気づいて突き放されたとはいえ、その後の感情のゆらぎを見ることができていないため今年はノミネート外に。
来年はこの女たちが本当にどうなるかわからないが大々的にここで取り上げたいから頑張って完結まで届いてほしい。
天海夕(クラスで2番目に可愛い女の子と友だちになった)
一方、この後ひどくなる方の2番目またはひどくなった方の2番目と称して紹介していた『クラスで2番目に可愛い女の子と友だちになった』からは、去年もノミネートした1番目に可愛い女の子こと天海夕。
こちらも結構売れてきて作者が色々と準備に追われているからか、原作の更新がほとんどなかったので選外に。
恋人だから、乗り越えられる。
季節は秋口、『クラスで二番目に可愛い』朝凪海と俺・前原真樹が友達になり一年が経とうとしていた。
今では交際順調なバカップル。海のおかげで俺もちょっとは垢抜けてきた気がするそんな頃、
「委員長。あのさ、私と……デートしてくんない?」
新田さんが、俺を海の前で堂々と花火大会に誘ってきて!?
結局いつもの皆で行くことになるも、天海さんの様子も少し変で――。
先日の夏休みや体育祭での出来事も重なり、おぼろげながら、この問題の根幹がわかってきたかもしれない。
進路や卒業後のふたりのこと、友達関係のことも。
恋人として支え合いながら乗り越えていく、高校二年二学期編!
ちなみに書籍版はWeb版に追いつこうとしていて、おそらくこの次の巻でWebに合流。
そしてWeb版の方は少ない更新の中で「告白されたらフる」「どうあってもずっと友だちでいる」という残酷極まりない方針を彼女である海と共有した状態で休載に入った。近い内にもっとひどいことになる。
愛澤カンナ(ひまてん!)
家事代行で家計を支える家庭的男子・家守殿一のクラスに転校してきたのは、
コスメブランドの女子高生社長兼モデルを務める、女子のカリスマ・美野妃眞理!2人が結ぶ秘密の関係とは...!?
女子高生社長×家事代行ラブコメ開幕!!
この夏に始まったジャンプの新連載『ひまてん!』
家事代行サービスで訪れた家が女子高生社長の汚家だったことから始まるニセコイチックな多角関係ラブコメであるが、こちらからは1クールくらいですぐに投入された3人目の女愛澤カンナをチョイス。
妃眞理の後輩である彼女が上京したときに困っていたところを助けてもらい、なんかこの人いいな……今後もよろしくお願いします! という形でラブコメヒロインレースに名乗りを上げた。
……のだが、本編では林間学校に突入し後輩である彼女の出番がほとんどない状態に。
連載が始まったばかりであり、概ね負けそうなのは確かであるものの、各ヒロインとの仲が深まる前に先行投入されたので出番が少なく、情報量があまり無いので選外に。
ちなみに後から投入されたヒロインなのでまだ公式サイトに名前はない。これも仕方がないことだろう。連載版1話から居てここに名前がなかった蝶野雛なんだったんだ。
ニセコイには負の感情があるのでニセコイの空気感で進む今作は微妙に読んでて苦しいが、本記事で取り上げるために継続で読むことはする。するが途中で心が折れてしまうかもしれないので来年ここに居なかったら察してほしい。
コレット・ロワール(杖と剣のウィストリア)
一人前の魔導士をめざして魔法学院に入学した少年ウィル。努力家の彼には魔導師として致命的な弱点があった。それは、“魔法がまったく使えない”こと。同級生や教師から冷たい視線を浴び、時にはくじけそうになりながらも、強い気持ちで邁進していくウィル。杖は使えなくとも剣を執り、魔法至上主義の世界で戦い抜く。自分だけに与えられた力を信じて。そして、大切な人との約束を守るためにーー
落ちこぼれの少年が剣で魔法に挑む。杖と剣が交わる魔剣譚が今はじまる!
ダンまちで有名な大森藤ノ原作の漫画作品で、今年の夏にアニメを放映し2期の制作も決定している『杖と剣のウィストリア』。
大事な人との約束を果たすために進み続ける主人公と、目指す塔の上から分身魔法でずっと見続けながら待っているメンヘラに片足突っ込んでいる大切な人という明らかに恋愛の結末は確定している本作からは、思いを寄せるクラスメイトの少女をチョイス。
CV:天野聡美*3
魔法学院に剣一本で挑む主人公を唯一バカにしないクラスメイトであり、原作者が得意とする、素直に純粋な好意を口にするショタの空気を受け継いだ主人公ウィルの言葉に翻弄されてテレテレしがちな彼女。
だが目指している相手のことも相手から向けられているクソデカ感情も知らないため、ただ思いを寄せているだけという状態で、決定的な一瞬を見せていないので今回は選外に。2期でどうにかなってしまうかもしれないが。
ついでに、アニメ自体が面白かったのでDアニメストアのリンクも貼っておく。
主人公がそれなりに強いものの、それでも超えるのが難しい壁に立ち向かうタイプのストーリーであり、バトルもかなり動いて見ごたえがある。結構オススメ。
姫崎莉波(学園アイドルマスター)
今年の5月にリリースされ、世間的に大流行して自分も大ハマリした学園アイドルマスターからは、偽物の方のお姉ちゃん・年下のお姉ちゃんこと姫崎莉波をチョイス。
大人びた雰囲気のある3年生。しっかりもので優しく、面倒見のいい寮のみんなのお姉さん。過去にユニットに所属していたこともあるが、結果は振るわなかった。生徒会に所属しており、書記を務めている。
この紹介文から主人公であるプロデューサーと過去に出会っていてその時にお姉ちゃんだと思われて甘えられていて、初星学園で再会するというシナリオ展開が読めるわけないだろう。
本編の莉波シナリオでは平成クソボケラノベ主人公Pが莉波のほぼ告白みたいなセリフを全部聞き流すという、あまりにも一直線すぎてここ通ったら話終わるよねみたいな展開を難聴でブロックする、遊戯王の手札誘発みたいなやり取りをしている。
そして全体ストーリーである初星コミュ3章4話では、担当が決まった後に出会い、過去の確認がうやむやになるという展開も用意され、負けヒロイン好きの人間*4が軽く盛り上がった。
実質本編(初星コミュ)では負けているし、個人シナリオでも難聴相手なので弱いと言ってもいい存在だが、流石に負ける要素がないくらいにはプロデューサーとアイドルの関係をはみ出しそうなので見送り。
というか美鈴の情報をもっと仕入れてノミネートしたかったのだが先日実装は来年5月と言われたのでまあ……今年は諦めの方向で……というのもちょっとある。
有馬かな(【推しの子】)
本当に衝撃的な結末で終わってしまった【推しの子】からは、存在強度が高すぎて負けヒロインっぽく描かれていたのに勝ちそうな空気をずっと醸し出していた有馬かな。
アクアと兄妹ということで少しは事情を知っていたルビー、最後まで復讐の側に居たが最後の最後に関われなかった黒川あかねと違い、復讐周りの話を何も知らずに葬式に参列して強烈なビンタをキメたところが最後の輝きとなってしまった。*5
キャラクターとしての存在強度の高さ、そして本作のヒロインは結局誰も勝ってないしもう負けてる云々じゃないよねという理由で選外に。そもそもこの作品の女は全体的に強いから立ち直りが早かったが。小説版のあかねは弱い弱くない云々じゃない場所に行ったので今回は省きます。
では、今年の本編に移ろう。
本記事は去年より12/24に出すために準備しているのだが、今からこれを読むと記事が書けなくなると思ってあえて読むのをズラした作品があった。
その中のひとつは、書籍で販売されたライトノベルの当たりの紹介とWeb小説の当たりのシェアリングにも取り上げた作品。
好きな子の親友に密かに迫られている
中学時代、瀬古 蓮兎は自分のことを救ってくれたクラスメイトの夜咲 美彩に恋をした。
高校も一緒になった蓮兎は、美彩に猛アタックを繰り返すがいずれも玉砕。しかし蓮兎は諦めなかった。
そんな日々が一年間ほど続いた。今日も今日とて蓮兎は美彩に愛を叫び、美彩の親友である日向 晴は美彩を守るように蓮兎を邪険に扱う。
しかし三人は普通に雑談もする仲だった。一緒に帰ることも多い。
帰り道、岐路で二人と別れた蓮兎は、少し進んだ公園のベンチに座る。しばらくすると、別れたはずの晴がやってくる。
「それじゃあ、今日もうち行こっか」
これはそんな三人のお話。
『好きな子の親友に密かに迫られている』(Web版:好きな子の親友が俺の○○を管理している)
前年の12月に書籍化に至ったカクヨムの連載小説。
好きな子にアタックする主人公『瀬古蓮兎』、まんざらでもない好きな子『夜咲美彩』、好きになっていった相手が告白をしていた所を横から見続けていた親友である『日向晴』の3人。
なんだかんだでくっつきそうになった所を察して親友が体を使って主人公を籠絡し、3人の歪んで壊れそうな終わっている三角関係が始まるのであった。
始まっちゃダメだろこの関係性。
誰が言ったか砂上の楼閣*6系ラブコメ、そんないつ崩れ落ちてもおかしくない脆い関係性のラブコメに居た弱い女は――。
日向晴。
1年間好きな男が別の女に告白する所を見続けていた女である。
高校受験のときに試験時間中に消しゴムをくれた主人公へお礼を言いに行こうとしたところ、日課の告白をしている姿を見、気になる男が別の女(美彩)に告白するというところが面白くなく妨害した結果、3人組の仲良しグループが出来上がってしまい、時間を重ねる中で美彩側もまんざらでもなくなっていき最終的にはくっつく直前で身体を使った強硬手段に及んでしまった。
身体関係で自分の存在をねじ込んだ晴もそうだが、ヤッてしまった結果男の態度がおかしくなり美彩側にも波及してこちらも大変なことになってしまった結果、罪悪感に潰れそうな男と罪悪感に潰れそうな女2人の少し触れたら崩れる三角関係が成立した。
他の三角関係ラブコメはここで奪い合いに発展するが本作は元の二人の仲がいいのでお互い「捨てないで」と縋りつく方向に進んでいく。
どちらかを選ぼうとしても、壊れそうなもう片方の存在から主人公は決断することができないし、そもそもどちらも捨てれないので主人公も追い詰められる。
あまりにも酷い状況ではあるものの、何も知らない外野から見ると二股に見えるのでその方向からも追い詰められる。
という話なのだが、限界ギリギリまで好意を隠し続けて爆発した結果その後が大惨事になった晴のせいで始まってしまった物語である。
美彩の方も相当なクソザコの素質がある弱さではあるが、今回は晴の方をノミネートさせていただく。
さて、年が明ける前に地獄の釜の蓋が開いた今年度だが、もう一つ大きなトピックスが存在した。
今さらですが、幼なじみを好きになってしまいました
今さらですが、幼なじみを好きになってしまいました 第1話
— 今さらですが、幼なじみを好きになってしまいました (@sa_ra_na_mi) 2023年12月24日
小説版はこちらhttps://t.co/RnSkYKwBMY#さらなみ pic.twitter.com/BiUPcoRcr2
トップクソザコヒロインメーカーの丸戸史明が小説版を担当するTwitter漫画/Note小説の連載が始まった。
メインヒロインである白坂陽花梨には10年来の幼馴染である高村夕が居て、ずっとアプローチしているのに中々届かずに悶々とした日々を過ごしていた。
他愛のない日常の中で好きを再確認しつつ、少しずつ距離を詰めてこうとする幼馴染――。という光に満ちた物語である。あった。
じれじれともどかしい、片想いの少女が歩む日常風景を描いていた本作。
そんな中、本作をまとめた同人誌版の発売がコミックマーケットにて頒布されることとなった。
そうして連載から約8ヶ月。オタクの好きが集まる夏のコミックマーケットにて、丸戸史明の好きが花開いてしまった。
第21話『はじまりの学園祭(後編)』(1/4)#さらなみ pic.twitter.com/lUz1y6kKvz
— 今さらですが、幼なじみを好きになってしまいました (@sa_ra_na_mi) 2024年8月12日
須藤絢深。
陽花梨の同級生で親友の女であり、主人公である夕の元カノだった女である。
通称ヤミ先輩。名前の時点でメインヒロインである陽花梨(ひかり)との明暗がくっきりしすぎている。
ちなみに上記1巻は光の章、この冬出るヤミ先輩の過去編である2巻は闇の章とされている。露骨がすぎる。
幼なじみの背中から伝わる体温に、平常心ではいられない陽花梨ちゃんが可愛すぎます!!
同じ部屋で何気ない日常会話をする10年来の幼なじみの2人の関係は、恋愛へと進展するのか気になります。
甘酸っぱいお話が漫画と小説で楽しめる、至福の一冊をどうぞお手元で心ゆくまでご堪能下さい☆
本編は、メロンブックスの1巻作品ページで書かれたこの文章からあの展開をお出しされた後に彼女との過去が明かされ始めた。
家庭環境から半家出状態となり、金銭に不安があるためパパ活を始めようとしたところ隣で主人公が受験に失敗してボロ泣きしていたため約束していたパパが逃げるところから始まった闇の章。
留年と不合格でお互いに落ちぶれ、傷の舐め合いをした結果お互いに相手を好きになってしまった。
だが隣の男に見合う自分になろうとしたヤミ先輩が人生のリベンジを始めた結果、彼女は一つの決断を下す。
最後の旅を終えた彼女は――。
連載漫画であるため別れの瞬間はまだ描かれていないが、前回の急転直下がコミケ頒布日当日であり、今回の闇の章最終編が更新されるのも冬コミ当日。絶対にロクなことが起こらないし、すでに肉体関係ありの元カノが再会で不意打ちキスしてきた瞬間を見られている時点で最悪極まりない状態。
そんなに好きなのにずっと離れていたという時点でもう弱い要素しかなく、このタイトルと1話からの展開から光の女が負けるはずがない。
この闇の女に未来はあるのだろうか。
話は少し変わる。
夏コミといえば、今年放映のアニメにこのような作品があった。
2.5次元の誘惑(リリサ)
3次元の女子に興味無し!
漫画研究部部長・奥村は今日も部室でひとり、画面の向こうに映る
愛してやまない2次元のキャラクター・リリエルの名を叫んでいた……。そんな奥村のもとへやってきたのは
「リリエルになりたい」という3次元女子・天乃リリサ。彼女は、漫画の中に登場する女の子のエッチで可愛い「衣装」が大好き。
そして、奥村に負けないくらいリリエルを愛する仲間(オタク)だった!奥村に秘密の趣味がコスプレであることを明かしたリリサは、
コスプレの写真や動画が詰め込まれた
「ROM(ロム)」のコレクションを見せて伝える――。「私っ……これを作りたいんです!!」
ふたりきりの部室で始まるコスプレ活動!
リリサが変身(コスプレ)したリリエルは奥村が衝撃を受けるほど本物(リアル)で!?
熱意に押された奥村もカメラを手に!?真摯に熱くコスプレに向き合う彼らが、
「何かを熱烈に愛している」全てのオタクへ贈る
コスプレ青春ストーリー、開幕!!
『2.5次元の誘惑(リリサ)』。
最初はお色気コスプレ漫画から始まったが次第にコスプレ愛とオタク同士の友情を主軸にした熱血青春コスプレ漫画になったジャンプ+連載の漫画作品である。
この夏にアニメ化され2クールが放映終了し、2期の制作も決定しているという、これからさらに来る作品である。
好きなマンガの美少女である『リリエル』に恋をしてリアルの女性を見ない*7オタクの『奥村正宗』が、そのリリエルを同じレベルで愛し、愛の表現をコスプレという形で昇華させたいと願う『天乃リリサ』と出会い、共にコスプレ道を極めていくことになっていくという話だ。コスプレ道を極めるって何?
そんなオタクに10年以上片想いし続け、相手がリリエルに愛を叫び続けてもなお好きをアピールし続ける一人の少女が居た。
橘美花梨。(CV:鬼頭明里*8*9*10)
クセのある髪の毛をネタに虐められていたところを先輩である奥村に助けられて恋をするも相手が2次元の女しか見なかったのでずっと片想い状態になっていた、現人気モデルの美少女である。
相手が2次元の女しか愛していないのでゆっくりと心の傷を癒やしつつ自分の存在をクソオタクの先輩に少しずつ刷り込んでいく予定が、別の女がリリエルのコスプレを完璧に近い精度でお出ししてきたので焦っていくところから彼女のコスプレの道が始まり、先輩との新しい物語が始まっていくのだった――。
……のだが、割と直接アピールしてるのに気付かれないし、決定的な一言を聞かれてしまったときの反応が「恋していないし付き合えない」という言葉、
そして先輩が現実を見るようになったキッカケであるリリサも少しずつ恋心を自覚しつつあるという状況であり、かなり負けが近い幼馴染系ヒロインになっている。
…………が、原作は恋模様が更に進んでいる。
現在の先輩はリリエルだけでなく3次元の女性も見れるようになり、過去から美花梨のことが好きなのかもしれないという感情に気付きつつある。
しかし自分が好きであり続けたリリエルを現実に”下ろしている”リリサが現実を見るキッカケとなったのも事実である。
2次元への愛と3次元への愛を両立するのか、並列で進めるのか、この物語の行く先がわからないのでまだワンチャンスある。
あるけど10年片想いしているのに自分以外好きになるやつがいないと思っていた相手に別の女ができそうな事実がだいぶ負けているので今回ノミネートとした。
余談だが。
原作版は最初はお色気マンガだったのに気づいたら道を極めるオタクの話になっていて正直クッソ面白かったのでかなりオススメ。
マンガの1話はこの下に置いておくが、ジャンプ+のアプリ版では全話が初回無料なのでぜひとも一度読んでみてほしい。
改めて読むとこの1話から今の熱血青春マンガ路線になるんだという謎の感動がある。
Web連載マンガの話をしたが、今年完結した作品からもう1作紹介する話がある。
恋したので配信してみた
生まれ持っての悪人面と不器用さで友達ができない犬塚悠は、高校入学時に学生寮に入る。だがそこは、男女6人全員16歳の秘密だらけのシェアハウスだったーー!?
『恋したので配信(キャス)してみた』。
かつて配信者をしていた主人公。高校入学と同時に入った寮で共に暮らすことになった主人公以外の男女全員が全員何かしらキャラを作って配信者をやっていて、それに気付いてしまった主人公が、それぞれの身バレなどのトラブルや配信者として次のステージに進むための壁を乗り越えるために協力していく、という話である。
主人公『犬塚悠』は優等生である『有栖川白愛』の正体を知ってしまい、それを隠し通すことを誓うものの、本人がすぐガバって同じ寮生へ正体がバレそうになってしまった。
そのバレそうになった相手こそが――。
慈美柚子。
インターネットでは萌え声でガチ恋を生産するタイプの配信者『ぷちねこ』として配信をしているが、リアルでは引っ込み思案な女の子である。
引っ込み思案な彼女は奴隷と主人という謎のワンステップを挟んで悠と友達関係を築き、リアルでは上手くいかない自分の意思表示を悠に助けてもらう姿や、その悠に不器用ながらも庇われている白愛への嫉妬心を露わにし、読者と寮の住民の女装釣り系配信者の応援を誘っていた。
しかし、全ての行動が一手遅かった。
配信者バレも2人目、彼女疑惑の解消も二番手、そのくせ高校有利になりがちな大イベントでは前座になるなど、色々な面でメインヒロインである白愛に届かない少女だった。
そして果てにはカップルが結ばれるタイプの伝説が残る学園祭の後夜祭でフられてきっちりと恋の決着までついてしまった。
優等生と配信上のキャラでの強烈な二面性で本人に衝撃を与えつつ、そのポンコツ性から主人公である悠の手助けを最も欲していた白愛。
少しずつ惹かれてはいたものの、引っ込み思案故に一歩踏み出すタイミングが遅れに遅れて白愛に届かなかった柚子。
負けるサブヒロインとして100点だが恋する乙女として0点の動きをした彼女は、正しく弱い女であった。*11
そして今年の最後を締めくくるのは、シリーズ開始から11年選手の長期作品であり、今なおファンタジー系作品の最前線を走っている名作から現れた。
ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか
迷宮都市オラリオ──『ダンジョン』と通称される壮大な地下迷宮を保有する巨大都市。
未知という名の興奮、輝かしい栄誉、そして可愛い女の子とのロマンス。
人の夢と欲望全てが息を潜めるこの場所で、少年は一人の小さな「神様」に出会った。
「よし、ベル君、付いてくるんだ!【ファミリア】入団の儀式をやるぞ! 」
「はいっ! 僕は強くなります! 」
どの【ファミリア】にも門前払いだった冒険者志望の少年と、
構成員ゼロの神様が果たした運命の出会い。これは、少年が歩み、女神が記す、
── 【眷族の物語(ファミリア・ミィス)】──
『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか』。(通称:ダンまち)
ダンジョンのある都市『オラリオ』を舞台にした、ダンジョンでの冒険と主人公『ベル・クラネル』くんを中心としたおねショタの物語である。
原作20巻、外伝も多数刊行され、現在はアニメの5期が放映中の本作だが、ここではアニメの話を取り上げる。物理書籍で追いかけると自宅の本入れの質量が大変なことになってしまうため。*12
※本項ではネタバレが多く入る。
5期は原作18巻くらいまで続くらしいのでその辺りのネタバレはご了承ください。今どの辺かは知らないけど……。
これまでのダンまちはベルくんの戦いと成長を描き、神の派閥『ファミリア』同士の抗争やダンジョンそのものの謎を解き明かす中で、危機的状況の中で立ちはだかる強敵を乗り越えていく物語であった。
が、現在放映中の5期に訪れたベルくんの危機は貞操の危機であった。
とある女神がたった一人を追い求め、本来人類に振るうべきではない神の力を使って都市の住民の記憶を操作してその身柄を押さえ、心を折って自分のものにしようと動き始めたのである。
その女神こそが――。
オラリオに属するファミリアの中では最大派閥であるフレイヤ・ファミリアの主神であり、物語の最初の方からベルくんの成長のために裏から糸を引いたり成長を眺めてニヤついていたラスボス系ヒロインである。
この女神には、酒場のウェイトレスであるシルの姿も持っていた。
シルの姿をした彼女は、共に死線を超えることで仲良くなったベルくんと同僚のリューの姿を見、自分の持っている感情を理解するために女神祭の日にデートを申し込む。
出歯亀と妨害を乗り越え、色々あって連れ込み宿で一夜を過ごす事になったシルとベル。 チャーム
自分の持つスキルの影響で魅了を弾くことができるベルくんは一夜の過ちを犯すことなく一晩を過ごすことに成功する。
聞こえてるか今まで出てきた弱い女と過ちを犯した男共。
翌日、改めて好きの感情を告白したシル。
しかし自分の憧れを第一とした彼は気持ちに答えることはなかった。
こうして2回フラれたフレイヤ様は強硬手段に及び、都市全体に神の力で魅了をかけて認識を操作しつつ無理やりベルくんを連れ去り、魅了の力で記憶を失った人々の対応と命を削るような厳しい修行と甘い言葉でベルくんの心を折りに行くのであった――。
認識操作というエロ同人もびっくりの手段で本人の身柄を奪い取り、魅了が聞かない本人には呪いによる記憶混濁として今の状況が真実であると認識させ、最終的に心を折って本人を自分のモノにしようとするというDLsiteの催眠調教モノのような手立てでベルくんを得ようとするも、魅了から逃れたベルくんの主神ヘスティアを中心とした者たちの手で魅了を解かれた。
正面から相対したフレイヤは、ベルくんを賭けた神同士の戦いを提案する――、というところまでアニメ化された。
ダンまちという作品は道中がどれだけ捻じくれていたり艱難辛苦に満ちていても最終的にはベルくんがその障害をすべて跳ね除けて勝利するという王道的ファンタジー物語であり、たぶんこの神同士の戦いもフレイヤ様が負けてベルくんを手に入れる手段すべてで敗北するのだとは思う。ここで負けたらダンまちという話が終わるだろというのもある。
が、シルとしてストレートに告白して2回失敗し、フレイヤとしての催眠調教も乗り越えられたかの主神、すでにヒロインとして大負けの境地にあるため、今年最後の負けヒロインとしてこの記事に名乗りを上げるだけの格を見せつけるのであった。
総評/このヒロインが弱い! 2024
今年も弱かったヒロインたちの歩んできた道を紹介してきた。
それでは最後に、今年最も弱かった女を決めてこの文章の終わりとしよう。
今年最も弱かった女、それは――。
日向晴である。
被害規模で言うとフレイヤ様が一番大変なことを犯しており、決定的な恋の終わりは慈美柚子が迎えていた。
しかし彼らの好いた男は強き男であり、彼女たちの持つ闇も光に変える強さを持っている。
この後の破滅具合もヤミ先輩が一番ひどいことになることは間違いなく、王道的負けヒロインムーブとしては橘美花梨が一番わかりやすい動きをしていた。
しかし彼女たちと違い、この後弱いままでこの物語を終わらせるだけの甘さと弱さが本作品からは感じ取れる。
三角関係が三角であるままで、かつ自分がずっと側にいるために弱い姿を見せて縛ろうとする姿。
そして状況を好転できない弱い男が、現状維持を求める女に絡め取られ、両者共倒れという最悪の先の最悪を回避するためにすべてを守ろうとする姿。
あまりにも弱々しく、あまりにもどうしようもない状況から、今年最も弱い女という称号を冠するに相応しいと判断した。
とはいえ、晴もそうだが美咲の方も大概弱々しい女だ。
現行のWeb小説版でも失いたくない気持ちを胸に抱えて壊れかけている彼女だが、文庫版での書き下ろしでより弱々しい姿を見せつけており、続刊が出るたびにパワーアップすることは間違いない。
それに、まだ爆弾を抱えている女たちはたくさんいる。
ヤミ先輩は今年最後の更新で破滅に満ちた戦いを始めるかもしれない。
天海夕は溢れてしまった想いに決着をつけるかどうか、その後の関係性を維持できるかわからない。
二番目彼女はそもそも何が起こるかわからない。
いつ壊れるか、いつ爆発するかわからない想いを抱えた少女たち。
その爆発が来年か、更に先かはわからないが、滅びに向かって進む少女たちへ贈ることのできる言葉はただひとつ。
良いお年を。
*1:あと原作は文章から陽キャの光が強すぎて合わなかった。加えてなんかこのまま話進んで八奈見さんとぬっくんがくっつくのが解釈違いすぎるので追うのがちょっとこわい。
*2:別レーベルで2シリーズ出してたので仕方がないとは思う
*3:代表作:アイドルマスターシンデレラガールズの白菊ほたる
*4:フォロワーと自分
*6:レビューにあったキャッチコピーだがメチャメチャ端的に表していて好きなので引用しまくっている
*7:親の離婚でリアルの感情を失った悲しい過去はある。が文字列だけで見るとかなり悪いな……
*9:ちなみに秋クールではニゴリリ2クール目とアオのハコ1クール目が重なったので鬼頭明里は1クールでジャンプ産の負けヒロインを2人演じたことになる。そんなことある?
*10:アオのハコつながりでついでに書いておくが、アニメ第6話の蝶野雛の後攻1ターン目は必見レベルでよかった。さらに見た感じ千夏先輩とくっつくところまではアニメ化しそうなのでその過程で蝶野雛が終わる瞬間もアニメ化されそう
*11:本当に余談だがこの作品で一番好きなのはミステリアス系アイドルの高嶺そらちゃんです。
*12:一冊ごとの分厚さが現行ライトノベルシリーズでは最も厚いと思っている。流石に境界線上のホライゾンほどではないが