Twitterの一部界隈で異様に好評だった映画があった。
トラペジウム。
乃木坂46の一期生が書いた長編小説がアニメ化された本作、Twitterの悪いオタク達が擦る謎の画像とやたらと熱狂的なファンがよく自分のTLを賑わせていた。
📣【告知】#C104(夏コミ)合わせ『トラペジウム』突発合同誌
— マナ (@manatee_iroiro) 2024年7月3日
『こんな素敵な合同誌ないよ!
〜trapezium unofficial fanbook(仮)〜』入稿&表紙初公開!
執筆者116+1/締切2週間で全員提出/全342ページ/厚さ2cm!
夢じゃない。夢で終わらせたくないから、現実にする。(ツリーへ↓)#トラペジウム合同 pic.twitter.com/XqKvngvCpB
いや116人全員が締め切り間に合ってちゃんと出ることになった合同誌はマジでイカれてるだろ。
と、まあそんな映画があって、あまりにも熱意ある人間が多すぎるのでいつか見に行こうと思っていた。
……のだが、夏の暑さと仕事のダルさにかまけて、今日はキツいけどいつか行こう……を繰り返し続けた7/4。
近くの映画館での上映が終わるらしいと聞いて、熱中症寸前の体を興味と行動力だけで見に行ってきた。
そこにあったのはーー。
星に手を伸ばして、魂を灼かれた人間の叫びだった。
ということで今回は映画を見に行ってきた記録。
もう上映館もほぼないのだが、現代はサブスクリプションがあるので終わった作品でも極力ネタバレなく感想を書きたい所存……なのだが、多分無理だと思う。
ということでネタバレは今回もお気持ち程度に白文字で隠すようにする。
あらすじ
アイドルオーディションにことごとく落選しつつも、幼い頃からの夢であった芸能界を諦められない東ゆう。彼女はセルフプロデュースのための構想として「東西南北の方位を冠した地元の4校に通う4人の美少女たちが、たまたま知り合って親友となり、交流を深める過程で偶然にも芸能界からスカウトされ、運命に導かれてアイドルグループ・東西南北としてデビューする」という筋書きを立て、城州東高校に通う自分を「東」のメンバーとすることを目論む。
Wikipediaにいい感じのあらすじがあったので序盤部分を引用。*1
初めはこんな感じでスタートした物語。
ゆうの計画通りにアイドルデビューをするも、アイドルになりたかった自分と、友達付き合いの結果アイドルになってしまった残りの3人は次第にすれ違い、ゆうと3人は衝突してしまう。
ゆうの目指したアイドル活動、その果てにあるものは……という物語。
東西南北の星たち
西の星:大河くるみ(左/黄)
「なんでみんな有名になりたいの……?」
高専でロボット研究会に所属する女子。萌え袖が特徴でロボットが大好きな女。高専にそんな女が居たら男ウケがメチャメチャ良いとかそんなレベルじゃないだろ。
おそらくユニット内で一番可愛く、一番人気があって、一番アイドルに向いていなかった彼女。
初めてできた大切な友達のために壊れるまで頑張った女の子。
南の星:華鳥蘭子(中央左/赤)
「ずいぶん遠いところまで行けるようになったわね……」
縦ロール金持ちお嬢様CV上田麗奈というマジでおもしれー女の最大公約数みたいな女。
作中ではその強烈なキャラクター性で人気があったらしい。だろうな。
自分が見つからないまま周りに流されていた中で光を見つけた女の子。
北の星:亀井美嘉(右/緑)
「私たちは元々友達だったんだから」
この一言だけだとガチ百合枠かと思いきや普通に彼氏もいるしエピローグの年齢から逆算して高校卒業前後で出産も経験している女。トラベジウムのときにお前が着るべき衣装は花嫁だったやろがい。
元いじめられっ子で自分を変えるために美容整形までしている。
過去の弱い自分を変えた、ヒーローと再び会えた女の子。
東の星:東ゆう(中央右/青)
「可愛い子を見るたびに思うんだ。アイドルになればいいのにって」
可愛くもなく、強烈な個性もなく、整った顔を持っているわけでもない主人公。
アイドルという光に魂を灼かれて、アイドルを目指して、打算と計画でそれを成し遂げてしまった女。
夢に取り憑かれた少女・東ゆう。
公式のあらすじにすらこんなことを書かれるしキャラ紹介で特徴となる作中の言葉選び時点で既に妄執が凄まじい主人公。
ガチの舌打ちや他の3人への凄まじい暴言などそういうとこやぞお前みたいな所は多々あれど、打算であっても3人の光になった彼女。
そんな彼女の物語だった。
こんな素敵な映画ないよ!
ちなみに該当のシーンはあまりにも強烈すぎるので公式が本編シーン映像としてインターネットの海に流している。
普通にネタバレなので気になった人だけ見てほしい。
と、名言を擦りたいだけのシーン抜粋はさておいて。
本作、打算で友達を作るところから破滅するところまで、一貫して東ゆうという女のアイドルへの妄執の存在が根幹にある。
妄執、執念、あるいは呪い。
表現としては色々あるが、自分の目標や夢、あるいは推しなどの好きな存在の一挙一動に苦しんだことのある人間には鋭く突き刺さる作品だったと思う。
そしてそういう人間はある程度の挫折は経験している、とも思っている。
だからこそ、東ゆうという女が夢に向けて計画を立て、夢のためにすべてを利用し、夢の中でもがき苦しみ、夢が覚めて自己嫌悪する。
夢に灼かれた人間を視聴者という視点で見ることで、再び心の何かが動きだす。そんな人間がトラペジウムという作品に灼かれ、繰り返し見たり創作に励んだりしたんだろうな、と思った。
自分も似たようなもので21時終わりの映画から家に帰ってそのままこの文章を書いている、トラペジウムに灼かれた人間の一人となった。
東西南北の青春は苦く壊れたものでも、そこには確かに4人があったように。
近くの劇場上映が終わっても、トラペジウムという作品には熱意と感動があった。
そんな記録を残したかった、という自分の思いを今回のブログの締めとする。
と、まあなにかに魂を灼かれた経験のある人間には鋭く突き刺さる本作。
上映館が近くて興味があったり、サブスクで配信されたらぜひともみなさんもトラペジウムを見てほしい。
*1:このあとの部分はメチャメチャストーリーの根幹の話があったのでできれば見ないほうがいい。ということでリンクは貼らない