第8回宮台真司氏が語る「日本社会の劣等性」 象徴はお上にすがる自粛警察
岸田文雄首相が14日、衆院を解散した。ほぼ任期満了となる衆院選も事実上始まった。何を問うべきなのか。「安倍政治」継承の是非、新型コロナ対策の総括、はたまた「新しい資本主義」のかたち……。様々な争点があるが、社会学者の宮台真司さんは、いま直視すべきはコロナ禍で可視化された「日本社会の劣等性」だという。
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――コロナ禍での衆院選です。何が問われるべき選挙ですか。
「アベノミクスに象徴される安倍晋三元首相の政治路線を、僕は『粉飾決算』政治と呼んできました。株価上昇や失業率の低下など一部の経済指標のみに注目する一方、『悪夢の民主党政治』という言葉で過去を批判する。まるで日本が良くなっているかのように、です」
「しかし実態は、実質賃金は25年間下がりっぱなしです。経済指標から社会指標に目を転じれば、自己肯定感や子どもの幸福度、家族生活への満足度など、飛び抜けて悪い数字だらけ。『見たいものだけを見る』政治が続き、惨状の自覚が不十分です。でも安倍元首相が元凶だというのも間違い。自民党は1993年に下野して再び政権に返り咲いた後、民主党政権を挟んで続いてきました。悪夢という言葉を使うなら、この惨状は四半世紀にわたる『悪夢の自民党政治』の結果です」
――総裁選から岸田氏は、新自由主義からの転換と、成長と分配の好循環を訴えていました。国会でも再分配のあり方が議論されました。自民党内で「自浄作用」が働いた結果ではないですか。
総選挙が迫るなか、いま私たちが考えるべきことは何か。有権者として何を問われているのか。寄稿やインタビューを通して考える連載です。記事後半では宮台さんが、日本が歩むべき民主主義の形を提唱します。
「違います。そもそも最近の自民党の経済路線を、新自由主義と呼ぶのがデタラメです。『規制改革』の旗の下で、既得権益を持つ大企業が身軽になるよう、雇用の非正規化などを進めただけ。新自由主義とは似ても似つかない」
「証拠は山のようにあります…