第40回家庭内でも「トランプ劇場」 激論カップルが示す相互理解の処方箋

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プエブロ=中井大助
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連載「それでも、あなたを」 アメリカ編②

【アメリカ編①】政治観が正反対の彼 結婚の誓いで伝えた「あなたは間違っている」

民主党を支持するヒラリーと、共和党を支持するマット。政治観は真逆でも、趣味も生年月日も同じ2人は引かれ合い、結婚しました。しかし翌年、トランプ氏が大統領に当選し、2人に試練がやってきます。政治がらみの会話で衝突が絶えなくなった2人の関係は、米国のように「分断」へと向かうのでしょうか。

 2015年に結婚し、ヒラリーは名字を「グラスゴー」に変えた。しかし、政治をめぐって夫のマットと対立することは変わらなかった。

 家庭内の論争では、「トランプ」がテーマとなる日が増えた。

 「トランプは民主主義への信頼を損ねた。米国の民主主義を危うくし、我々を危険な道に導いた」

 ヒラリーはこう力説する。

 しかし、マットは「誇張だ」と語る。「トランプとともに、生きたり死んだりするわけではない。政党より政治家個人が大きいわけでもない」。マットはそれより、特定の政党を支持することが、全人格を示すことに危機感を抱く。

 ただ、ヒラリーにとっては、「選挙で投票した相手はアイデンティティーの一部でない」というマットの主張は納得いかない。

 「投票した人に自分を投影している人は多い。特にトランプ支持者はそうだ」

 マットは大統領選で、当然のようにトランプに投票した。ヒラリーは「共和党候補だから」と、理解しようとした。

深まる分断 口をきかなくなった隣人

 だが、トランプは大統領に就任してからも排他的な言動を繰り返し、国内の分断をあおるかのような政治手法を続けた。法律を無視するかのような振る舞いも多かった。

 そして4年後。トランプは再び出馬表明した。その頃には、街の人々の分断はさらに深刻になっていた。

 ヒラリーは大統領選の選挙運動が始まると、民主党のジョー・バイデンを応援する看板を庭に立てた。すると、隣人はあいさつをしてくれなくなった。

 米国では、支持する候補者の看板を庭に立てることは一般的な光景だ。ヒラリーも選挙のたびに立ててきた。

 隣人とはそれほど親しかったわけではなかったが、いつも手を振ったりあいさつをしたりした。でも、選挙後は一度も口をきいてくれなくなった。

 地元政治にも異変は起きていた。

 2020年の下院選に向け…

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この記事を書いた人
中井大助
アメリカ総局長
専門・関心分野
アメリカの社会、政治、文化

連載それでも、あなたを 愛は壁を超える(全42回)

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