定年後5年で司法試験合格 「ITじいさん弁護士」の公務員的勉強法

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松沢拓樹
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 市役所を定年退職後、京都大の法科大学院で学び、65歳にして司法試験を突破した弁護士がいる。司法試験合格者の平均年齢は20代後半。同期では最高齢の合格から弁護士となって6年。裁判資料を読み込むための3台のパソコン画面は、黒色基調のフィルムカメラのネガのよう。定年後になぜ、勉強法は、見慣れない色合いの画面に囲まれる理由は――。

 一念発起、弁護士への挑戦を決めたのは、定年を2年後に控えたころだった。

 福岡県弁護士会所属の吉村哲夫さん(72)はもともと、福岡市役所の職員だった。役所では、五輪の招致や国際スポーツ大会の運営に携わり、市幹部まで務めた。

記事の後半では、吉村さんが難関の司法試験を突破した勉強法を紹介します。公務員ならば誰しもが身につける経験を存分に生かしたやり方がありました。その一方で、受験勉強には欠かせない「あること」も明かします。

気持ちだけは若く 髪形も若者に寄せてワックス購入

 公務員としてのゴールが見えた58歳のころ。再就職しても、せいぜい5年。その後の長い余生を過ごす自分が想像できなかった。「死ぬまで続けられる仕事がしたい」。大学は法学部出身。市職員として法務を担当した経験もあり、司法試験にも役立つはずと思った。だが、現実は違った。

 大学院で机を並べる若者に、気持ちだけは追いつこうとしたが、還暦をすぎた年齢ゆえの体力の衰えは否めなかった。

 「神社仏閣が好き」と選んだ京大の法科大学院では、親子ほど年齢の離れた学生に囲まれて、日々、深夜3時まで机に向かった。周りの学生と同じ目線で情報交換しようと、ツイッターLINEも始めた。髪形も若者に寄せて、ワックスも買った。

 だが、体力が追いつかない。気持ちが折れかけるたびに、送り出してくれた元同僚たちの顔が浮かび、思いとどまった。

 「特別な勉強法があるのかと…

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