「俺の顔つぶせば首が飛ぶ」「言論弾圧では」 公開の文書、経緯克明
安倍政権下で放送法の政治的公平性について首相官邸側と総務省側とのやりとりを記録したとされる文書は、すべて行政文書だったと総務省が認めた。特定の政治家の関与により、水面下で新たな解釈が加えられていく過程が克明に描かれている。
文書によると、政府が新しい解釈を加えるに至ったきっかけは、2014年11月26日だった。
当時の礒崎陽輔首相補佐官側が総務省放送政策課に「政治的公平について局長からレクしてほしい」と、電話連絡したことから始まった。
その3日前に放送されたTBSのサンデーモーニングについて、礒崎氏は「コメンテーター全員が同じ主張の番組は偏っているのではないか」との問題意識を持ち、ツイッターで関連の発言を多数投稿していた。
番組では、2日前の衆議院解散を受け、翌月の総選挙に向けた各党の動向などを報じていた。スタジオには司会の関口宏氏のほか、元毎日新聞主筆で「NEWS23」アンカーを務めた岸井成格(しげただ)氏、三井物産元役員で多摩大学長の寺島実郎氏らが出演し、政権に批判的な意見も述べていた。
レク以降、回数重ねたやりとり
官僚による政治家への説明である「レク」は、同28日に実施された。礒崎氏は放送法で定める政治的公平性の解釈を巡って疑問を投げかけた。総務省の安藤友裕情報流通行政局長に対し「一つの番組では見ない、全体で見るというが、全体で見るときの基準が不明確ではないか」「一つの番組でも明らかにおかしい場合があるのではないか」と指摘したとしている。
従来、政府は政治的公平性について「一つの番組ではなく、放送事業者の番組全体をみて判断する」と解釈していた。礒崎氏は総務省側に「今は政府側の立場なので質問できないが、いずれ国会で質問したい」と発言したと記されている。
この日のレク以降、礒崎氏と…
- 【視点】
日本の放送制度の脆弱性を露わにした事例だと捉えています。つまり、「政治的に公平であること」(放送法4条1項2号)の解釈内容そのものよりも、政権中枢が特定番組を念頭に放送法解釈に介入しようとしたこと、そしてそれが制度上排除されきっていないこ
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