「タローマン」監督・藤井亮さんが語る「僕がウソをつき続けるわけ」

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太田啓之
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 NHK・Eテレの奇天烈(きてれつ)な番組「TAROMAN(タローマン) 岡本太郎式特撮活劇」でブレークを果たした映像作家の藤井亮さんを、熱狂的なタローマンマニアの記者がインタビューしました。かつては流行を追いかけたCMを作っていたという意外な事実、電通をやめるきっかけとなった哀(かな)しいエピソード、コンプレックスに満ちていた心を解放してくれたコピーライター糸井重里さんの言葉など、初公開の秘話が満載です!

60~70年代映像の「暴力的なまでの力強さ」

 ――「タローマン」は1970年代の特撮テレビ番組の雰囲気を徹底的に再現しつつ、岡本太郎の言葉と作品を伝えるという斬新な番組でした。

 僕は1979年生まれですが、物心ついた84~85年ごろはちょうど「特撮の谷間」の時代で、「ウルトラマン」や「仮面ライダー」のテレビシリーズは放送されていなかった。アニメも急速に洗練が進み、「うる星やつら」や「タッチ」のようなきれいな絵柄が主流となった時期でした。

 そんな中、再放送でいきなり、60~70年代のまるで質感の異なる映像を見たので、子ども心にも強く印象に残りましたね。あの頃の作品は、現代の目で見るとものすごく骨太で、自由で、きれいにまとまっていない。だからこそ、暴力的なまでの力強さを感じるのだと思います。

会社の方針と逆を行く「怖さ」

 ――電通関西オフィスに勤務していた頃にも、熱血アニメのテイストで岡山県の造船会社をPRするCMシリーズ「造船番長」などを手がけていますね。社内の反応はどうだったのですか。

 広告会社で仕事をしていると、「スマートでしゅっとしたもの」「きれいで一番新しいもの」を作ることが正しいとされがちです。そんな中で、「造船番長」(2010年)や、「石田三成」(16年、戦国武将の石田三成をほめたたえることで、滋賀県の魅力をアピールしたCM)など、新しさと逆行するものを作り続けるのは、けっこう怖いというか、居心地が悪いというか、居場所のない感じを味わい続けていました。

 「ミッツ・カール君」(藤井さんが発案した、NHK・EテレをPRするキャラクター)の映像を作っている時、カール君のフィギュアと組み合わせるジオラマ(箱庭)が欲しいな、と思ったんです。

 電通社内でスチレンボードを切って粘土を盛って山を作り、缶入りスプレーで塗装しようとしたら怒られた。社内は外気から完全に遮断されているので、スプレーで塗料なんて吹いたら、空気が汚れてえらいことになってしまいますから。周囲ではマーケティングとかストラテジーとか横文字を駆使した議論が飛び交う中、ジオラマと缶スプレーを持って社内をうろうろしていると「この広い空間のどこにも、スプレーを吹く場所はない」「俺の居場所もないんだ」という思いがしみじみしてきて。それが「会社をやめようかな」と思い始めたきっかけでしたね。ジオラマは結局、会社を出て近くの河原で塗装しました。

記事の後半では、自作品に対するコンプレックスを解消してくれた糸井重里さんの言葉、作中の「ウソ」に説得力を持たせるためのディテールへの徹底したこだわりなどに話が広がります

 ――電通の社風に合わせたCMを作ろうとは思わなかったのですか。

 いや。入社した当初はちゃん…

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