第12回若者に届いていないNHK 元民放プロデューサーが求める逆転の発想

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聞き手 編集委員・後藤洋平
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 公共放送でのエンターテインメントコンテンツは、どうあるべきか。「地方の時代」と言われながらも東京一極集中が強まる放送業界において、NHKが担うべき役割とは何か。毎日放送(MBS)の元プロデューサーで関西在住の影山貴彦・同志社女子大学教授(メディアエンターテインメント論)が「若者は壊滅的に見ていない」と肌で感じるというNHKの番組、そして地方局の活用について望むことを聞いた。

かげやま・たかひこ

 1962年岡山県生まれ。早稲田大学卒業後、毎日放送に入社。テレビのドラマやバラエティーのほか、ラジオ番組「MBSヤングタウン」のプロデューサーなどを経て大学教員に。各メディアでエンタメ関連の連載コラムを執筆するほか、番組の賞の審査員や朝日放送(ABC)ラジオ番組審議会委員長なども務める。

「先生、それ何ですか?」

 ――公共放送のNHKとして、エンターテインメント分野ではどのようなコンテンツを発信すべきだと考えていますか?

 僕自身が東京の大学生時代に就職活動した際、第1志望がTBS(東京)で、第2志望が毎日放送(大阪)でした。ラジオとテレビの両方を制作する局で働きたかったのが理由ですが、NHKは受けませんでした。ある意味で振り切ったエンタメ番組を作りたかったので、NHKでは難しいと判断したからです。

 退職後は大学教員として多くの学生たちと接してきましたが、若い人にとってNHKは今も昔も身近な存在ではない。テレビ離れを認めたくはないけれど、やっぱりNHKは若者に、圧倒的に見られていません。

 かつてTBSでドラマ「カルテット」(2017年)などを手がけ、関西テレビに移って昨年「エルピス」を担当したプロデューサー、佐野亜裕美さんを外部から迎えたNHKのドラマ「17才の帝国」をゼミで話題にしても「先生、それ何ですか?」。壊滅的に見ていませんでした。年配の人々や、報道への関心が高い人は見ていますが、若い人にNHKは届いていません。

 ――新聞もそうですが、NHK自身もそうした危機感を抱いているように思えます

 ええ。だからこそ「17才の帝国」のように、いろんな試みで種まきをしているのだと思います。僕が若かった頃、お笑いやバラエティーのレギュラー番組で「これはぜひ見たい」というものは、NHKにはほとんどありませんでした。しかし現在は「SONGS」など、本当は民放が作りたいと思うような番組を作っていますよね。

 ただ、繰り返しますが若い層は見ていません。NHKがNHKであるためには、これから社会を背負う人々から広く受信料を集めなければいけない。しかし、開拓の試みは現段階では思うような結果が出ていないと思います。

 ――NHKは今秋、受信料の史上最大の値下げに踏み切ることになりました。大河、連続テレビ小説(朝ドラ)、紅白以外のエンターテインメントは無くていいという意見もあります

 僕が毎日放送に勤めていた頃、民放には潤沢な資金がありました。「イベントの予算が200万円あるから企画書を作って。好きなようにすればいいから」なんてこともザラでした。だからこそ、いろんなチャレンジができて人気番組も生まれたのでしょう。

 今、民放は制作費の削減で大変です。NHKの予算が減るといったって、民放に比べたら全然マシだと思いますよ。人だっていっぱいいる。機材だって最新のものがそろっている。制作費のカットについては、民放の現場から学ぶというのもいいでしょう。NHKと民放の制作局で、研修のための人事交流をしてみるのも面白いのではないでしょうか。

ガチガチに固めては100点以上は出ない

 僕は今のNHKからバラエティーをなくせとは全く思わない。作ってほしい。ただ、若い人にすり寄っても結果が出ないのであれば、その意識は一度捨てるべきだと思う。

 NHKの戦略に疑問を呈する影山さんも、「本当に面白い」という番組がNHKにもあるといいます。そして関西のテレビ局にいた影山さんの話は、放送でもある「地方と東京の格差」にも広がります。

 たとえば「半沢直樹」(TB…

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この記事を書いた人
後藤洋平
編集委員|ファッション・メディア・文化担当
専門・関心分野
ファッション、メディア、文化
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    たかまつなな
    (笑下村塾代表)
    2023年4月26日14時0分 投稿
    【提案】

    若者をどう取り込むのかというのがNHKの中でも課題になっています。記事では、「へたに特定の世代に向けて作る必要はない」とありますように、面白いものは世代をこえて楽しめるものだというのは同意しますが、私はむしろNHKにこそ若者向けの番組を作っ

    …続きを読む

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