男性の性被害を認めない社会 元ジャニーズの告白、孤立させないで
ジャニーズ事務所の創業者、ジャニー喜多川氏(2019年に死去)による所属タレントへの性暴力疑惑で、声を上げた被害者は全員男性です。
「男が男に襲われるなんて信じたくないと、日本の社会全体が否認していた」
ジェンダー法学者の柳本祐加子さんはそう話します。
今回の性暴力問題は、学校やスポーツ指導でも見られる構図と同じ、とも指摘。被害実態の究明、被害者のケア、未然に防ぐ方法は――。柳本さんに聞きました。
「加害者は計画的にやっています」
――元ジャニーズJr.による性被害の実名告白が相次いでいます。
「最初に記者会見した方、後輩のことを思って名乗り出た方々に心から敬意とねぎらいの気持ちを表します。貴重なことを語ってくれています。勇気ある告白、という報道表現は要注意です。『言えなかった/言えない私は勇気がない』『やっぱりダメな男だ』と、自分を責めている人もいるかもしれません」
「彼らは『シャワールームに行って、体を洗い流した』『涙が自然と出てきて、止まらなくなった』などと告白しています。この反応は、女性の性被害者と共通します」
――今回の問題では、加害者、被害者がともに男性です。
「この社会では性別にまつわる固定観念が根強く、性被害を受けるのは、力の弱い女性というレッテルが貼られています。そのため世の中で『強い存在』とされている男性が被害を受けると、信じられない、受け入れられないという意識が出てきます」
「これが男性被害者に、公に言うのは恥ずかしい、と思わせてしまうところもある。性被害を受けたと声を上げるのは性別に関係なく困難なことですが、男性の方が上げづらい面はあるでしょう」
「そもそも性暴力は女性が被る問題という意識があります。男が男に襲われるなんて、信じられないし聞きたくない。そんな社会的な否認があります。だから、多くの人が耳をふさぎ、目を背けてしまうのです」
会見を見て、心配になったことは
――社会的な否認、ですか。
「いまでも社会的な否認は強いです。社会に対する自分の信念を崩されたくない。女性が性被害に遭ってもそうです。凶悪な男が、かわいそうな女に性暴力を振るう。そんな分かりやすいストーリーでないと、社会はなかなか受け入れません」
「今回はジャニー喜多川氏と…
ジャニー喜多川氏の性加害問題
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