数学の天才、神秘的というインド幻想 芥川賞作家が見たウソ・ホント
聞き手 中島鉄郎
インドは、現代社会に飽き足らぬ日本の若者を「神秘性」で吸い寄せてきました。ただ、インドを描いた小説「百年泥」で芥川賞をとった作家の石井遊佳さんは、言わば「成り行き」滞在のクチで、あこがれも幻想もなかったといいます。石井さんに「ほんまかいな」精神で見たインドを語ってもらいました。
ごく一部を知っているだけで全体を語ろうとするのは空しいものですが、インドに関してはまさにそうです。
地域により気候や人種、言葉もさまざま、経済力の差も大きい。私が住んだ2都市の落差は、「違う国」というより「違う惑星」に来たと言いたくなるすさまじさでした。
最初は2006年、サンスクリット語研究者である夫の留学に同行し、ヒンドゥー教の聖地である北部のバラナシに09年までおりました。
「日当たりが悪い部屋」が好条件
大きな居宅の数部屋を夫婦で…