アトピー患者が求める「リアルな声」 LINEで届ける49歳男性
「こんにちは、ライジンです」
ヘッドセットをつけカメラに向かう。アトピー性皮膚炎の体験を発信する、ユーチューバーだ。
子どもの頃から肌はガサガサだった。学生時代に悪化し、「魔法の薬」だったステロイドを塗ってもかゆみが治まらない。薬はどんどん強いものに変わり、ついに医師は「うちではもう診られない」とさじを投げた。
不信感と不安が募り薬をやめると、症状はますます悪化した。せっかく入社した会社には4日しか行けず休職。感染症にかかって脳炎にもなりかけた。「治療しなければ」と思い知り、民間療法へ。そこで仲間とふれあい、「一人じゃない」と前を向き、やがて回復した。27歳で結婚し、2児の父親に。民間療法へのこだわりは次第に薄れ、標準治療に戻してアトピーとつきあっていた。
転機は2020年。新しい治療薬を使った感想を発信すると、「もっと教えて」という声が届くように。妻も認める「口が達者」を生かし、よどみなく話す動画での発信に本腰を入れた。活動名は本名の田辺雷次郎からとった。配信した動画は70本を超す。
アトピー性皮膚炎の治療薬はここ5年ほどで新薬が続々と誕生している。ネットには医師が発信する「正しい情報」はたくさんある。でも、患者が知りたいのは「他の患者たち」のリアルな声だ。22年11月、自身の動画やSNSで見つけた新薬についての投稿などを集め、一覧できる場「アトピー治療新薬ユーザーの会」を作った。500人ほどがつながる。メンバーが通う全国の病院情報も随時更新している。
ポリシーは「賛同・共感・応援」だけをすること。他人の治療法や考え方を否定しない。特定の治療法を薦めたり、押しつけたりせず、物品も売らない。メンバー同士の交流が目的でもない。ただいつもそこにあって、必要なときに立ち寄れる場を目指す。
アトピーを快適に生きるヒントになればうれしい。自分も多くの人に支えられて生きてきた。「ちょっと恩返しができるかな」
◇
「アトピー治療新薬ユーザーの会」は、LINEでID「@652rjwqs」を検索し、「友だち追加」をすると参加できる。