「地域は家族」 小さなJクラブに根付く理念 YSCC横浜の挑戦
今年で30周年を迎えたJリーグ。「地域密着」の理念をJ発足前から貫き、社会貢献活動に力を入れているクラブがある。横浜市を拠点とするJ3のYSCC横浜(正式名称・横浜スポーツ&カルチャークラブ)。欧州にある総合型地域スポーツクラブを目指し、地元に目を向けてきた。スローガンは「地域はファミリー」だ。
「日雇い労働者の街」と呼ばれた中区の寿地区。簡易宿泊所が並び、アルコール依存症などの回復施設もある。クラブが拠点とする同区の本牧地区から数キロ。クラブはここに暮らし、集う人たちに健康管理を支援する活動を続けている。
「人々をスポーツの力で元気にしたい。地域を家族化したいんです」。そう話すのはYSCCの吉野次郎さん(58)。トップチームを運営する株式会社の社長を務め、育成や普及、フットサルFリーグ1部のチーム運営などを担うNPO法人の理事長でもある。
寿地区で無料の健康プログラム
寿地区は高齢化など様々な課題を抱える。クラブのスタッフが健康体操を行ったことをきっかけに2017年に本格的に無料の健康プログラムを始めた。管理栄養士やコーチらが足を運び、現在は毎月1回、栄養や口腔(こうくう)衛生、健康体操、睡眠、サッカーなどの各講座を開く。講座とは別にウォーキングサッカーも教え、大会も開催している。
クラブの年間運営費は2億円ほど。60億円台のJ1川崎フロンターレや横浜F・マリノスに比べ、規模はかなり小さい。しかし、地域への貢献活動は大きなクラブにひけをとらない。
地域はファミリー。それを貫く理由はクラブ設立時の出来事が関係する。
ルーツは1964年創設の「中区スポーツ少年団」。後に各年代にチームを持つクラブになった。そこに全日本空輸(現ANAホールディングス)の支援が始まり、80年代に「全日空横浜サッカークラブ」に。そして「事件」が起きた。
生え抜き選手らの切り捨てに反発
86年3月、生え抜き選手や…