第5回10兆円大学ファンドに続く研究力強化策 地方大は生き残りかけ競争
低迷する日本の研究力の底上げをねらって創設された「地域中核・特色ある研究大学強化促進事業(通称J-PEAKS)」の行方が注目を集めている。申請した69大学から初の審査を経て採択された12大学が22日、発表された。大学関係者の間では「研究大学としての生き残りをかけた競争」(地方大学の副学長)と受け止められている。この事業では最大25件程度が採択される予定で、残る席は13。総額1500億円の争奪戦は来年度も続く。
「今回採択された大学は我が国の研究力を牽引(けんいん)する大学群の一翼を担うことになる。学長のリーダーシップのもと、戦略の実現に向けた取り組みを確実に進めていかれることを期待している」。盛山正仁文部科学相は同日の閣議後会見でこう激励した。
日本の研究力強化対策では、世界トップクラスの研究力をめざす大学が、10兆円規模の官製の大学ファンド運用益から、1校あたり年数百億円の巨額支援を最大25年間受けられる国際卓越研究大学制度が設けられ、東北大が最初の認定候補となっている。
同制度は最終的に5~7大学程度を対象にするため、認定された大学とほかの大学の格差がますます広がるとの懸念が指摘された。このため国は、地方大学や私立大学が参加しやすい「J-PEAKS」を創設し、2022年度の第2次補正予算に1498億円を計上し基金をつくった。採択されれば、1大学あたり5年間で最大で計55億円の支援を受けることができる。
採択された広島大学の越智光夫学長は「集中的に投資して日本の中ではトップ、世界でも戦える研究領域をつくっていく。採択はうれしいが、日本を地域から牽引していく責任も強く感じる」と話した。
旧帝国大学で唯一応募し、採択された北海道大学の阿部弘副理事は「狭き門の中で採択された。ほっとした」と胸をなで下ろした。道内唯一の総合大学として、研究機構や国立大学を束ね、北海道を盛り上げるために、国際卓越研究大学制度よりも趣旨に合うJ-PEAKSに応募したという。「地球環境に優しく、人手もかからない農業や漁業など、新しい1次産業をやると明確に打ち出したことが採択に結びついたと思う」
申請した私立の22大学(資金の大半を日本政府から受ける沖縄科学技術大学院大学を除く)で唯一の採択となった慶応大学は「採択していただき、学問、特に実学の成果から『未来のコモンセンス』をつくる研究大学になるべく、提案したことを着実に実行していく」(広報室)とした。ライバルの早稲田大学は国際卓越研究大学に申請し、9月に「落選」した。
一方、採択されなかった徳島…