第6回消え失せた祖国への愛 ウクライナの子どもに寄り添うロシア人女性
キーウ=藤原伸雄
「ウーーー、ウーーー」
2023年11月下旬の昼過ぎ、いつものようにスマホのアプリが作動し空襲警報が鳴り響いた。
ウクライナの首都キーウ中心部から北東に約40キロの場所にあるセミポルキ地区の学校「セブンフィールズ」。子どもたちは授業を中断し、慣れた動きで防寒具を羽織って、粉雪が降る中、10分も経たずに全員がシェルターに駆け込んだ。
【連載】私のスイッチ 人生の決断
人生には様々な分かれ道があります。迷いや葛藤、別れ……。心の中の「スイッチ」を押して、新しい生き方を選んだ世界の人々の物語をお届けします。
シェルターは20畳ほどの広さで薄暗い。外光を遮るように土囊(どのう)が積まれている。子どもたちは電球のあかりを頼りに本を読んだり、カードゲームをしたりして思い思いの時間を過ごした。テーブルの下に座り込んで、じっとしている子もいる。
「みんな大丈夫?」。子どもたちにウクライナ語で、そう語りかけるのは校長のオクサナ・ウォロジナさん(44)。「この子たちを立派なウクライナ国民に育てる」と語るウォロジナさんはロシア人女性だ。
「これが私の選んだ道」
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