第5回「ダメージしかない」中小に遠い円安の恩恵 拡大しつづける賃金格差
片田貴也 北川慧一
超円安時代
歴史的な円安ドル高が続いている。家計の負担は膨らむ一方、輸出企業には過去最高益をもたらした。34年ぶりの円安水準は、私たちにとって、企業にとって、日本にとって、「恵み」か「災い」か。その功罪を解き明かす。
物価高が押し寄せ、賃上げが声高に叫ばれてきたこの3年。自動車向け部品の加工を手がける日進工業(東京都大田区)は、その波に乗れず、賃上げできずにいる。
従業員は10人ほど。プラスチックの成形加工技術に強みを持ち、山梨県にある工場で主にドア部品を作る。自動車メーカーの2次請けにあたる。
その自動車メーカーが円安を背景に、もうけが膨らんだのと対照的に、この数年は赤字が続く。竹元盛也社長は「受注が増えず、業績は厳しい」と肩を落とす。
自動車関係の取引は、規模が大きいうえ、安定している。しかし、自動車は海外販売が好調となっても、国内での生産が大きく増えるわけではない。大手のもうけも「下請けであるうちのところまでは全く来ていない」(竹元さん)。
そこに円安の進行が重しとしてのしかかる。
原油高と円安で、プラスチッ…