第5回「ダメージしかない」中小に遠い円安の恩恵 拡大しつづける賃金格差

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片田貴也 北川慧一

超円安時代

歴史的な円安ドル高が続いている。家計の負担は膨らむ一方、輸出企業には過去最高益をもたらした。34年ぶりの円安水準は、私たちにとって、企業にとって、日本にとって、「恵み」か「災い」か。その功罪を解き明かす。

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 物価高が押し寄せ、賃上げが声高に叫ばれてきたこの3年。自動車向け部品の加工を手がける日進工業(東京都大田区)は、その波に乗れず、賃上げできずにいる。

 従業員は10人ほど。プラスチックの成形加工技術に強みを持ち、山梨県にある工場で主にドア部品を作る。自動車メーカーの2次請けにあたる。

 その自動車メーカーが円安を背景に、もうけが膨らんだのと対照的に、この数年は赤字が続く。竹元盛也社長は「受注が増えず、業績は厳しい」と肩を落とす。

 自動車関係の取引は、規模が大きいうえ、安定している。しかし、自動車は海外販売が好調となっても、国内での生産が大きく増えるわけではない。大手のもうけも「下請けであるうちのところまでは全く来ていない」(竹元さん)。

 そこに円安の進行が重しとしてのしかかる。

 原油高と円安で、プラスチッ…

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この記事を書いた人
北川慧一
経済部|労働キャップ
専門・関心分野
労働政策、労働組合、マクロ経済
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    木村裕明
    (朝日新聞記者=企業、経済、働き方)
    2024年6月15日13時18分 投稿
    【解説】

    完成車メーカーを頂点に、多数の部品メーカーがピラミッド型に連なる多重下請け構造の自動車業界でも、原材料費や光熱費の上昇分の価格転嫁は以前より広がりつつある。電気代の急騰に悲鳴を上げた下請け企業に配慮して、トヨタ自動車が2022年度からエネル

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    中島隆
    (朝日新聞編集委員=中小企業の応援団長)
    2024年6月16日9時52分 投稿
    【視点】

     武元さんは、中小企業のことを語らせたらピカ一の論客です。彼の弁は、ほとんどの中小企業の気持ちを代弁しています。  価格転嫁の問題は、ずーーーーーーーーーーーっと言われてきました。けっきょく、代わらないんです。  アベノミクスに代表される

    …続きを読む