第1回「短距離じゃ…」の常識を覆した厚底 日本勢はパリで巻き返せるのか
2021年8月1日、東京・国立競技場。
「世界最速」を決める東京オリンピック(五輪)男子100メートル決勝で、日本の陸上関係者はファイナリストたちの足元に注目していた。
「あのスパイクで、タイムを出せるのか」
8人中5人が履いていたのは、米スポーツ用品大手ナイキの「エアズーム マックスフライ」。いわゆる、厚底スパイクだった。
レースは当然のように9秒台の争いとなった。ラモントマルチェル・ヤコブス(イタリア)が9秒80の欧州記録を樹立して金メダルを獲得した。アジア勢に目を向ければ、ファイナリストとなった蘇炳添(ソヘイテン)(中)は準決勝で9秒83のアジア記録をマークした。いずれもマックスフライを履いていた。女子100メートルを五輪新記録で制し、200メートルとの2冠を達成したエレーン・トンプソンヘラ(ジャマイカ)も、やはり履いていた。
男子100メートルに出場した山縣亮太(セイコー)、小池祐貴(住友電工)、多田修平(同)の日本勢は予選敗退。3人ともナイキのスパイクを履いてはいた。ただ、いずれも「ズーム スーパーフライ エリート2」という薄底のスパイクだった。
厚底のマックスフライで練習したことはあったというが、本番では、履き慣れた薄底を選択していた。
ナイキによると、マックスフライには、長距離用の厚底靴にも搭載されているカーボンファイバー(炭素繊維)のプレートが使用されている。それが高い反発力と足を前に押し出す効果を生むのだという。
長距離のイメージが強かった厚底はこの時、すでに短距離界でも世界を席巻していた。
ある日本の実業団の短距離コ…