「私」を超えた「人間」に憧れた文化人類学者 川田順造さんを悼む

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構成・女屋泰之
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 「口頭伝承論」「文化の三角測量」など、文明社会を相対化する研究で知られた文化人類学者の川田順造さんが昨年12月20日、90歳で亡くなった。生前親交の深かった建築史家の陣内秀信さん(77)に、追悼の思いを語ってもらった。

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 30年くらい前だったろうか。冬のある日に妻と、神奈川県湯河原町にある川田先生のご自宅に伺ったことがある。四方田犬彦さんと奥さんも一緒だった。歓談の後、理由はよくわからないのだが、川田先生が夜更けにもかかわらず突然、「たこ揚げに行こう」とおっしゃる。近くの高台に登り、大の大人たちがたこを揚げ、草原に寝そべった。気持ちのいい時間だった。

 自由で行動力があり、子どものように好奇心に満ちあふれた人だった。何にでも関心を持ち、私も研究仲間である言語社会史が専門の原聖さん、ドイツ近現代史の松本彰さんとこの10年近く、時々先生をお訪ねして勉強会を重ねてきたが、最後に研究報告を聞いてくださったのはつい1年少し前のことだ。

 1970年代末に地中海学会…

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