第5回「カジノ」に定義はある? 地下組織の浸透を許す施設に欠けた要素
国際カジノ研究所 木曽崇所長
経済効果を当て込んで合法化に踏み切ったり、犯罪組織の巣窟と化して運営を禁じたり。東南アジアでは、カジノを巡り各国が様々な動きをみせています。そもそもカジノとは何で、どんな功罪をもたらすのか。カジノを取り巻く事情に詳しい、調査会社「国際カジノ研究所」の木曽崇所長に聞きました。
――「カジノ」に定義は存在しますか。
テーブルゲームやスロットマシンを備えた「総合ギャンブル施設」というイメージですが、決まりや定めがあるわけではありません。
【連載】カジノフロンティア 岐路に立つ東南アジア
人、カネ、そして犯罪までも。カジノは様々なものを引きつけます。それを手に入れた先に待ち受けるのは、経済的な繁栄か、それとも混沌(カオス)か。岐路に立つ東南アジアの実情を、各国の現場から報告します。
――具体的にどんな施設がありますか。
ギャンブル専業から、日本で計画される統合型リゾート(IR)のような娯楽施設の一部まで、幅広い営業形態があります。客層も、地元客向けか外国人向けか、かっちりした「VIP向け」か大衆向けか、など様々です。
――運営者は。
公営と民営に分かれ、半官半民も存在します。最近は民営が主流ですが、公営のみ許された国・地域も残ります。民営のほうが挑戦的で新しい遊びを提供できる傾向があり、公営は保守的な施設運営になりがちです。
当局による事業許可の出し方にも違いがあります。ラスベガスのある米ネバダ州では市場競争を前提とし、行政は参入要件などのルールを設け、民間事業者の競争を促している。対照的に、日本やシンガポールなどは、ライセンス(事業免許)を与える対象数を限定し、行政が管理します。
「明らかに反社会勢力が……」 世界は多様な施設が
――カジノ開業による経済効果とは。
主に、開業前と開業後のふたつに分けられます。開業前には、開発投資関連の効果が生じます。新規開業のためにカジノ業者が施設建設や土木工事に投資したり、現地に集った建設労働者らがお金を落としたりします。
開業後は、観光関連の効果が見込めます。外国人客らが現地を訪れ、ホテルや飲食店など新たな雇用も生まれます。カジノ税制などを創設すれば、税収も増やせます。
――カンボジアなどにあるカジノと、ラスベガスなどとの違いは。
ラスベガスなど世界的に有名なカジノと、東南アジアのカジノに、どんな違いがあるのか。記事後半では、カジノ運営に伴い懸念される「地下経済」の浸透について聞きます。
カジノをきちんと統制するに…