(社説)NHK経営委 早急な改革を求める
NHK経営委員会の新しい委員長に、野村ホールディングス名誉顧問の古賀信行氏が就いた。
放送法が禁じる番組への干渉を主導した森下俊三氏の後任である。経済界での豊富な経験を買われた古賀氏に、立て直しへの期待がかかる。
しかし、早々に気がかりな発言もあった。
就任に際し、番組干渉問題について記者会見で考えを聞かれた古賀氏は「事実を知らないのに、ああだこうだ言及するつもりはない」などと述べた。
日本郵政グループという一企業の不正を報道現場が追及していたさなかに、郵政側の訴えを受けた経営委がNHK会長を厳重注意したという前代未聞の不祥事である。
その後を受けて登板した古賀氏には、原因を検証し、再発防止策を実行する責任があるはずだ。
森下氏が去って一件落着したわけでもない。会長を厳重注意した過ちを組織としていまだに認めていないからだ。経営委は、厳重注意したことを議事録に残さなかった点について反省したにすぎない。
これがどれほど異常なことか、古賀氏にはよく考えてもらいたい。委員会としての認識を改めたうえで、二度と繰り返さないことを視聴者に約束するべきだ。
ほかにも経営委には課題が山積している。特に気になるのは、肝心の経営監督となると執行部の方針を追認しがちな現状だ。
たとえば先月末、NHKはネット上で展開してきたニュースサイトを縮小し始めた。日本新聞協会などが、なし崩し的な業務の拡大で民業に影響があると指摘していた問題ではあるが、一方で国民の不利益になるとして縮小に懐疑的な意見も出ている。
国民が日常生活のなかで必要な情報をどう受け取るのか。大きな影響があるテーマなのに、議事録を見る限り、経営委として確かな問題意識をもって執行部と議論を深めたようには思えない。
BS番組の配信にかかわる費用を不正に予算に計上したとされる問題でも、事実関係の解明をうやむやにした執行部の方針を経営委が覆すことはなかった。
経営委が緊張感をもって執行部と相対するために、なにが足りないのか。古賀氏には虚心坦懐(たんかい)に組織の仕組みを点検し、早急に自己改革に着手することが求められる。
必要とあらば、経営委員の選び方なども含め、現場から政府に対して法制度の見直しを提言することにも大きな意味があるだろう。
- 【視点】
「NHKの肥大化が、民業としての放送事業者と新聞社を圧迫している」という言説を、日本新聞協会と民放連は有識者会議や社会に向けて繰り返してきた。果たして、このような言説を真に受ける人が放送業界の外にいったいどれだけいるだろうか?日本の新聞社と
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