年末恒例の朝日新聞「書評委員19人が選ぶ今年の3点」が発表された(12月28日付け)。その中から気になったものを紹介する。
福嶋亮太推薦
本書はモダニズムという「妖怪」を探求してきた美術家の評論集。菱田春草からボブ・ディランまでを結ぶ地下水脈が、この庭のような本で再生される。今は亡き楳図かずおや谷川俊太郎への評価も興味深い。
福嶋亮太推薦
本書は『孫子』の思想や成り立ちから、日本や欧米での受容までを、気取りのないおだやかな文章で論じる。著者の学問の深さは虚栄心からではなく、ことばという現実への敬意から来るものである。
前田健太郎推薦
本書は歴史学の入門書。正しい分析手法を伝授するのではなく、様々な分野の歴史家が実際に何をしているのかを示す。方法論は、自分とは異なる研究スタイルを「学問ではない」などといった形で丸ごと切り捨てるために用いられることも多いが、本書はそのような態度とは無縁だ。
長沢美津子推薦
本書は実話の絵本で菅瀬晶子文、平澤朋子絵の「ウンム・アーザルのキッチン」。難しい立場を生きるイスラエルのアラブ人女性の半生を、台所での日常から描く。人を幸せにする料理の数々に、紛争さえなければと。既刊号だが書店から注文可。
岡崎乾二郎『而今而後』は読売新聞でも郷原佳以が推薦していた。来春、近美だったかで個展があるんじゃなかったっけ。