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ウラシマンのネクライム側二次小説:ネオ・サッポロ事件の翌日、クライドもナツミも、自分のデスク周りを整理していた。部署異動から、わずか8日目の事だ。2日後には、それぞれ元の部署に戻る。そのための片付けだった。「あーあ。結局、
ウラシマンのネクライム側二次小説:深夜、ルードビッヒ一行が、ミレーヌを連れてネオ・トキオに戻った。本部ビルのエレベーターから降り、彼女は元の場所に帰ってきた。長い1日だった。エレベーターに同乗したのはルードビッヒの他に
ウラシマンのネクライム側二次小説:廊下にいたウルフが病室の扉を開ける。男が通り過ぎ、続いて入ろうとしたジタンダは、ウルフに上着の後ろ襟を掴まれて止められ、廊下に引きずり戻された。気を利かせろよ、とウルフは忍び声でジタンダ
ウラシマンのネクライム側二次小説:女医によるエコー検査や内診を終え、ミレーヌは診察室へ通された。「申し上げにくいのですが、流産です。でも妊娠初期の流産は、お母さんのせいではありません。ほとんどの場合は、受精卵の遺伝性疾患
ウラシマンのネクライム側二次小説:2人揃って、職員用出入り口に来た。教えられた通りにドアのロックを解除し、開ける。外の空気が入って来る。身を切るように冷たいが、閉鎖空間にいたせいか、気持ちが良かった。扉のすぐそばに車が
ウラシマンのネクライム側二次小説:逃走用の車が用意されるまで、時間があった。その間、何人かがトイレを申し出、小沼は許可する。残った人質、誰でも殺す相手として、脅しは十分に機能した。客用に待ちスペースに置かれている、お茶と
ウラシマンのネクライム側二次小説:事件現場の銀行は、住宅地の中にある。近くに適当なホテルは無く、ルードビッヒ達は、そこから5km離れた、中心地に近いネクライム所有のビルの部屋に落ち着いた。到着時刻に合わせて報告のための
ウラシマンのネクライム側二次小説:ミレーヌは体に違和感を感じた。交渉してみるしかないか。「あなた、私はお手洗いに行きたいの。いいかしら」立てこもり犯の小沼は、ギロリと彼女の顔を睨んだ。「お前、名前は何だ?」「清水モニカ
ウラシマンのネクライム側二次小説:「ええ、場所は、該当銀行の近くで。あと、そうですね、2時間くらいでそちらに着かれるかと思います。目立たない車2台と、ネオ・サッポロの警官の制服は手持ちにありますか? はい、了解しました。それでは
ウラシマンのネクライム側二次小説:今、ミレーヌは自分の身を守るための武器も何も、無かった。妊娠初期である事を考えれば、派手に動く事もためらわれる。とりあえず、犯人を刺激しないように状況を打開しなくてはならない。「ねえ、
ウラシマンのネクライム側二次小説:全く、ついてなかった。銀行強盗、立てこもりとは。あの男、少しでもいいから金を奪い、さっさと逃げれば良かったものを。ミレーヌは運の悪さに舌打ちしたい気分だった。今頃、警察は周囲を取り囲み、
ウラシマンのネクライム側二次小説:これからどうすればいいのか、立てこもり犯、小沼太一は混乱していた。まさか立てこもりなんて、やる予定は無かった。金を奪って逃げるはずだった。そもそも仕事をクビにならなきゃ、こんな事には
ウラシマンのネクライム側二次小説:およそ40分前の事である。ネオ・サッポロの中心地から南に離れた住宅地、こじんまりとした平屋(ひらや)の店舗、ドウナイ銀行北が原(きたがはら)支店に、ひとりの男が訪れた。じきに午後1時半だ。
ウラシマンのネクライム側二次小説:ルードビッヒが本部に戻ると、壁のテレビがニュースを映し出していた。画面右上に緊急報道・ネオ・サッポロ銀行立てこもりと文字がある。市街地と思われる歩道上、奥の十字路角の平屋の建物を背景に、
ウラシマンのネクライム側二次小説:新しい名前を手に入れたミレーヌは、ネオ・サッポロに居た。着くなり、駅近くの美容室で髪を染め直す。ダークブラウンに仕上がった髪は生来の髪のようで、懐かしさを感じた。幹線道路に沿う歩道は除雪
ウラシマンのネクライム側二次小説:ドイツから戻った翌日、外は雨模様であった。昨日戻ったのはすでに陽が沈んだ頃である。時差のある長旅と、少々の精神的疲労を感じて、ルードビッヒは早々に眠りについた。その疲れは、ベルナールと
ウラシマンのネクライム側二次小説:ロジーナの声に、ルードビッヒは振り向いた。そして無言で彼女の顔を見つめる。「驚くほどの事では、ございませんわ。昔の馴染みで、風の噂が耳に入りますの。犯罪帝国ネクライムの総統が2代目に変わ
ウラシマンのネクライム側二次小説:ベルンでの会談が終了したが、ルードビッヒは、すぐにネオ・トキオには戻らなかった。ナツミが配属初日に発した「マイセンのコーヒーカップ」の単語が古い記憶を思い出させ、スイスに行くのなら近く
ウラシマンのネクライム側二次小説:翌日、ルードビッヒはスイスにいた。北アメリカ地域は旨味が大きいが、掌握にはまだしばらくは時間がかかる。ヨーロッパ地域もクリスタル・ナイツ・ネクライム瓦解後、かつてのヨーロッパ支部の残党
ウラシマンのネクライム側二次小説:列車の窓の景色は、あっという間に通り過ぎて行く。ミレーヌの乗ったチューブトレインの車両は、金曜日の昼過ぎだというのに想像より乗客は多かった。とは言え、6割程度の混み具合ではあったが。
ウラシマンのネクライム側二次小説:ルードビッヒは自室に戻ると、テーブルの上で梱包を開き、絵を手に取り、眺める。その絵の女は、やはりミレーヌに似ていた。顔のパーツだけでなく、目線をこちらに投げかけて、笑みを浮かべる表情が似ている、
ウラシマンのネクライム側二次小説:本部より1階下のフロア、トレーニングルーム。この部屋はスティンガー部隊用であり、さして広くは無いが、様々なトレーニングマシーンが置かれている。その中で、上半身は裸でチェストプレスマシーン
ウラシマンのネクライム側二次小説:「そういえば、少しサベリーエワ様に似ていますね。偶然とは言え、面白いですね」ルードビッヒは画商の言葉を疑った。今、ミレーヌに似ていると気づいただと? もっと前に気づくだろう。画商
ウラシマンのネクライム側二次小説:「少し、出てくる。ひとりでいい」翌日11時を過ぎた頃、ルードビッヒは外に出た。3時にはスイスに出立ですよ、とジタンダが声をかけても、そのまま無視して本部を出る。エア・カーを走らせ、ギンザに
ウラシマンのネクライム側二次小説:「大変申し訳ありません、自分は下戸なものですので」クライドがすまなそうに、総統に断りを入れた。ジタンダは、ジンジャーエールにしときます、と返した。その返事にクライドは今度は、「お手数かけ
ウラシマンのネクライム側二次小説:翌日の朝食の席に、ミレーヌの姿は無かった。いつもなら4人掛けのテーブルに、ルードビッヒとミレーヌが斜向かいに居るはずなのに、今朝は男がひとり、座るだけである。彼は無言で食べていたが、あま
ウラシマンのネクライム側二次小説:「ミレーヌ様、もうお体は、よろしいんでございマスデスか」一度決めてしまえば、翌日は気分が良かった。ジタンダに大丈夫よ、と答えながら、彼女は今日、やらねばならない仕事に取り掛かる。コン
ウラシマンのネクライム側二次小説:その日、所用から本部に戻って来たミレーヌ・サベリーエワは、少しぼんやりしていた。窓際のソファーに腰を下ろし、肘掛けに左肘をつけて片頬を付き、女盛りのすらりと伸びた美しい脚は組む事も無く
ウラシマンのネクライム側二次小説:ひと月が過ぎた。部屋の洒落たバーカウンターは、とっくに設置されており、その奥の棚には酒瓶とグラス類が並んだ。さしずめ、ペントハウスのバーの中に職場があるかのようだ。ジタンダはバーテ
ウラシマンのネクライム側二次小説:ヨーロッパであれば初夏と言えるが、ここネオ・トキオは梅雨と呼ばれる雨季であった。昨夜からの雨は上がっていたが、曇天の下、湿気を含んだ空気が残っている。2048年だからと言って、天気ま
ウラシマンのネクライム側二次小説。ミレーヌの過去。:ミレーヌは、めずらしくヨーロッパ支部に呼ばれた。業務報告は普段の連絡で済んでいるので、何かと思った。司令室に行くと、上司のレオナルドが待っている。上司は変わら
ウラシマンのネクライム側二次小説。ミレーヌの過去。:「ミレーヌ!」誰かが、自分の名を呼んだ。まとまらない思考で、ぼんやりとしていた意識が、急に現実に戻される。脇に抱えた書類ファイルを、落としそうになった。「あ、申し訳
ウラシマンのネクライム側二次小説。ミレーヌの過去。:そして今日、初めてミレーヌは、軽く笑った。おそらく3日ぶりに、笑った。「私、もう悩むのに飽きたの。今さら、普通の生活なんて求めない。あなただって、知ってるん
ウラシマンのネクライム側二次小説。ミレーヌの過去。:「ボクは高校を卒業する頃、オルガに尋ねたのさ。それまでも色々と納得できない事があったから。中学生の時は漠然と、高校生にもなれば、明らかに。教えてもらった雇い主
ウラシマンのネクライム側二次小説。ミレーヌの過去。:穴の中に置かれた棺の上、ミレーヌとヴィクトルが葬儀屋が用意したピンクの薔薇の花びらを散らした。さようなら、オルガ。今までありがとう。それを言葉にする事なく、ひ
形の無い月 (31) 7月14日(キャトーズ・ジュイエ) 2
ウラシマンのネクライム側二次小説。ミレーヌの過去。:「おい、ブロンドは傷つけるな。大事な愛人だぜ。「若すぎねぇか」「ジジイは若ぇのが好きなんだろうよ」また男達が話している。愛人って、何の事だ? 私が誰の愛人だ
形の無い月 (30) 7月14日(キャトーズ・ジュイエ) 1
ウラシマンのネクライム側二次小説。ミレーヌの過去。:壁掛けテレビの中では、アナウンサーと芸能人達がエッフェル塔を背景に、これから始まる花火の事を話している。7月14日の熱狂は、フィナーレを迎えようとしていた。この
ウラシマンのネクライム側二次小説。ミレーヌの過去。:「ハイ、ミレーヌ。聞いたよ、無事に進級、おめでとう。これで9月から2年生だ」土曜日、いつもの調子でヴィクトルが来た。7月に入り大学も夏休みだが、それぞれの教師
ウラシマンのネクライム側二次小説。ミレーヌの過去。:夏を感じさせる風が、気持ち良かった。大学の春学期が終わり、無事に進級も決まった。じきに7月で、ミレーヌは秋には大学3年になり、そして18歳を迎える。すらりと伸びた
ウラシマンのネクライム側二次小説。ミレーヌの過去。:新聞の件の後、ミレーヌの誕生日は来たが、父との会食は断っていた。父への思慕と恐怖が心の中で混沌とし、どんな話をすればいいのか、わからなかったからだ。会食は強要も
ウラシマンのネクライム側二次小説。ミレーヌの過去。:3日後、水曜日。いつものように朝食を食べた。焼き立てのクロワッサンはミレーヌの好物である。朝食はバケットを食べる家庭が多いと聞くが——それは主に単価の面であったが
ウラシマンのネクライム側二次小説。ミレーヌの過去。:こぎれいな店は落ち着かないから入りたくない、と子供が言うので、蚤の市の客を目当てに開いていたカフェで、ローストビーフのサンドウィッチと飲み物をテイクアウトして、
ウラシマンのネクライム側二次小説。ミレーヌの過去。:翌日は、ヴィクトルの提案通りに蚤の市に行く事にした。ミレーヌは行った事が無いので興味が湧いたというのもある。だが気分的に友人達とは行く気になれなかった。
ウラシマンのネクライム側二次小説。ミレーヌの過去。:『ニシンの樽は、いつまでもニシン臭い』、生まれ育ちが悪いと何かの拍子に表に現れるという、ことわざ。ミレーヌには、まるで自分の事を言われたように聞こえた。いくら
ウラシマンのネクライム側二次小説。ミレーヌの過去。:今日で、3回目のデートだった。少なくともピエトロは、そう思っていた。前回からは上映時間に合わせた待ち合わせになったので、昼食を共にする事が無くなった。その
ウラシマンのネクライム側二次小説。ミレーヌの過去。:だからこそ、隙間の時間に昼食にしようと思った。ミレーヌは美容室帰りだから、お昼はまだだ。2人は、ファストフード店に入るとランチセットを注文し、それぞれが支払った。
ウラシマンのネクライム側二次小説。ミレーヌの過去。:「似合うわ、素敵よ。来週、もう1回ブリーチ? 仕方ないのよねー」 教室で、ミレーヌにロザリーが声を掛けてきた。お互い、ブロンドに憧れる少女同士だ。シンパシ