因果な父子の対決、一部カラーのモノクロ映像、醸し出す何とも言えない不思議なダークな雰囲気がまるでかつてのデヴィッド・リンチを彷彿とさせます。
舞台は1933年。4年連続で「世界で一番悲しい町」に選ばれたカナダの町ウィニペグで地元のビール会社が開催する「世界で一番悲しい音楽」を競うコンテスト。恐慌後の苦しい社会で賞金獲得を狙い世界各国から集まってくる参加者の中にはとある一家の姿があった。主催するビール会社の女社長とかつてねんごろな関係にあったチェスターはアメリカでの興行私生活に失敗して恋人と共に故郷へ戻ってきたばかり。その父親は女社長に恋心を抱いていたが息子との仲に嫉妬しとある凶行を働いたとはいえいまだに彼女への想いを引きずっている。またセルビアから参加した流浪のチェリストとして名をなした男は実はチェスターの兄。一家がそれぞれの思惑を抱いて参加したコンテストの結末は…。
ガイ・マディンは『ギムリ・ホスピタル』や『アーク・エンジェル』を見た時にはすごく実験・アングラ的で正直分け分からんと思いつつも映像だけは悪夢のようにインパクトが強く印象に残っておりました。それに比べれば今回はあのダークな雰囲気を保ちつつもかなり話的にはわかりやすかったと思います。というか相変わらずの「きてれつさ」にヤラれた。ビールのあぶくがきらきら輝くクリスタルの脚にゃまいりました。そんな脚の上で恍惚の表情を浮かべるロッセリーニはステキすぎ。ちなみに原作はカズオ・イシグロ…ほんとはどんな話なんでしょうかね?小説から舞台を移した「世界で一番悲しい町」ことウィニペグはマディン監督の故郷なんだそう。自虐的? 怪作ぐあいが非常に好みの1本でした。
原題:The Saddest Music in the World 監督:ガイ・マディン 2003年製作(カナダ/アメリカ)
出演:マーク・マッキニー、イザベラ・ロッセリーニ、マリア・デ・メディロス
@第5回東京フィルメックス(2004.11.20~11.28開催)
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