「私は思い出したくないのです」 沈黙に込められた原爆孤児の苦悩
四半世紀近く原爆報道に携わってきた。被爆者や家族の語りに耳を傾けてきて、絶対に忘れられない、決して忘れてはならないと自分を戒める言葉がある。
「私は広島を思い出したくないのです」
十数年前のことだ。私は一人の原爆孤児を捜していた。その孤児は広島の中心街にあった商店の息子で、原爆投下時には学童疎開で広島を離れていた。店があった街路は爆心地にほど近く、跡形もなかった。息子が家族で唯一の生き残りだったことを突き止め、しかも東日本で健在だった。
連絡先も判明し、面談取材を申し込もうと電話をかけた。先方は突然の申し出に驚いた様子だったが、取材の趣旨を伝える私の説明に耳を傾けていた。「よく、たどり着きましたねえ」。戸惑いを隠せない口調ながらも、こちらをねぎらうようでもあったと記憶している。
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