決勝を前にコンストラクターズチャンピオン獲得を争う両首脳が記念撮影。泣いても笑っても、このレースでチャンピオンが決まります。どちらが獲得しても久々の戴冠になります。
今シーズン最後のスタートタイヤはこうなりました。
不運も相まってQ1落ちを喫した16番グリッドスタートのハミルトンのみが逆ストラテジーとなるハードタイヤをチョイス。チャンピオン争いやランキングに左右されることはありませんが、ハミルトンにとって長年愛機としてきたメルセデス、またメルセデスパワーユニットともこのレースで袖を分つこととなります。
今回でF1を降りるドライバーも多くいますが、ペナルティ降格者もいつもより多めです。フェラーリのルクレールはパワーユニット交換により10グリッド降格で19番グリッドから。ウィリアムズの2人はギヤボックス交換によってアルボンが18番グリッドから、コラピントは最後尾20番グリッドスタート。また中団のコンストラクターズランキングに左右するハースのヒュルケンベルグは予選時のアウトラップのピットレーンで追い越しを行ったため、4番手から3つグリッドを下げています。
スタートは各車比較的順調に見えましたが、
ターン1で3番スタートのフェルスタッペンがピアストリのインをつき
接触。
フェルスタッペンは上手く進行方向を向いて立て直すも、ピアストリは真逆を向いて大きく順位を下げる。
フェルスタッペンは言い訳。
ピアストリは実に冷静な皮肉。フェルスタッペンはこの件で10秒のタイムペナルティが下っています。フェルスタッペンは戻り方がよくロスはある程度抑えられたものの、ピアストリは2番スタートからほぼ最後尾まで落ちるハメとなっていますので、いくらオープニングラップのコーナー一つ目とはいえ、ペナルティが軽いように感じます。
そしてレッドブルの悲劇はこれだけでは済みませんでした。
10番グリッドからスタートした相方ペレスは9番スタートのキックザウバーと接触。
不運(ばかりと言い切れませんが)続きのペレスはまたもや早々にマシンを降り、このレースで最初のリタイヤとなってしまいます。長らく続く彼の状況を上手くフォロー出来る者はいるのだろうか。。なかなか抜け出せないことをむしろ気の毒に感じます。
ここまで1周目の出来事です。比較的平和なヤス・マリーナでの最終戦は話題たっぷり。2周目の順位変動はなかなか派手めです。ポールスタートのノリス以外は大なり小なり順位が変わる。ESの交換ペナルティによりグリッド降格したルクレールは一気に-11となる入賞圏内の8位浮上。スタート直後にやり合ったフェルスタッペンは7つ順位を下げて11位、ピアストリはリタイヤしたペレスの前、最後尾の19位でプラス17。11番スタートのレーシングブルズ角田はクラッチのトラブルでスタートが鈍り、プラス6の17位に転落。あっ、順位が入れ替わってしまっている(誰と?)
ピアストリが2位から転落し、好スタートを決めて10周目までに6位を走行するルクレール。マクラーレンと獲得ポイントで並んでいます。ただ並んだだけではダメ。さらに21ポイント加算しないと逆転チャンピオンは獲られません。次なるターゲットはメルセデスのラッセル。
そしてコンストラクターズランキングで争うアルピーヌのガスリーは1人で2人がかりのハースを振り切らなければなりません。3位は是が非でも死守したい。
一方でハースのヒュルケンベルグはルクレールにかわされて6位に後退。真っ向勝負ではなかなか勝負にならない。
ならば早めのピットへ向かい、頭脳で勝負に出る。今までは気合と根性で戦ってきたアメリカンなハースも今シーズンからチーム代表が替わり、良くも悪くも頭を使った戦い方で中団上位を渡り歩いてきました。
4位ラッセルは少しずつ3位ガスリーを追い詰め始めています。ラッセルにとってはアルピーヌのコンストラクターズ争いより、当然自身の表彰台獲得が重要。
15周目にガスリーはラッセルより先にミディアムタイヤからハードタイヤにスイッチ。アルピーヌのエースがチームを支えています。
ガスリーが一旦下がったことにより、暫定的に4位を走行するルクレール。毎周回ハイペースを維持して3位ラッセルとの間合いを詰めていきます。
18周目になると、ラッセルに対してアンダーカット可能範囲に入ってきました。19番グリッドスタートからまさかの表彰台登壇が見えてきました。ならば
入るしかない。21周目にピットへ。先にピットを済ませたガスリーの後ろ、ヒュルケンベルグの前9位で復帰。ヒュルケンベルグに対してオーバーカットしたことになります。
26周目に2位走行のサインツ
翌27周目にトップのノリスがハードタイヤに履き替えると、
同じ周回に3位ラッセルがピットへ。これでフェルスタッペンとハミルトン以外の17人がタイヤ交換を終えたことになります。
ラッセルがトラックインすると、先にタイヤ交換を終えたガスリーの後ろとなる暫定7位に後退。またもやガスリーの後ろでくすぶることに。ちなみにラッセルを猛追していたルクレールはピットアウト後の24周目にガスリーをかわしたため、いつの間にかラッセルの前にワープ。戦い方がメルセデス陣営より賢く、速さもあります。
レース折り返しの31周目。9番スタートから今シーズン最初で最後のポイント獲得が期待されたキックザウバーのボッタスがスロー走行しています。右フロントタイヤが「軽トラのタイヤ」みたいに細くなっちゃっているけどどういうこと?!
こういうこと。ハースのマグヌッセンに追われた際、オーバースピードから止まり切れず、アウトからかぶせたマグヌッセンに追突してしまいました。2人ともこのレースがひとまずF1ラストレースになるかもしれないっていうのに、終わり方が悲し過ぎるよ。マグヌッセンは完走しましたが、ボッタスはこれにて終了。
ルクレールの追い上げばかり注目してしまいますが、ハミルトンも予選での不運からかなり巻き返しを図っている1人です。唯一の逆ストラテジーですから、ピットタイミングや戦い方が違います。
35周目にハードタイヤからミディアムタイヤへ。
アロンソの前となる7位で復帰。その後ろには10ペナを消化したフェルスタッペンがみえています。現役チャンピオン経験者揃い踏み。3人合わせて13回チャンピオン也(笑)
ハミルトンはその後ヒュルケンベルグをかわすと、ラッセルが二度バトルしたガスリーをサクッとかわして5位へ。前からマクラーレンのノリス、フェラーリ2人、メルセデス2人の順に並んでいます。
終盤まで前を追い続けたルクレールが無線で最終確認。サインツ、ルクレールとも奮起しましたが、マクラーレンが優勝してしまうとその苦労も残念ながら報われません。この最終戦だけの問題では無い、これまでの積み重ねの結果です。
このサーキットのジンクスに抗うこと無く、ノリスがポールトゥウィン。この瞬間にマクラーレンが1998年以来となるコンストラクターズチャンピオン獲得となりました。
そして何と、最後の最後でハミルトンがラッセルの前でフィニッシュし、4位でメルセデスでのレースを締めくくっています。
最後ラッセルちゃんと走ったかー?!まさか譲ったんじゃないか?!互いの完走を労う。来シーズンのメルセデスはラッセルに託されました。
《決勝結果》
1 ノリス (マクラーレン・M)
2 サインツ (フェラーリ・F)
3 ルクレール(フェラーリ・F)
今シーズン初めてドライバーズチャンピオン争いに名乗りを挙げたノリスは初優勝含め4勝し、来シーズンへの希望に繋げています。惜しくもコンストラクターズチャンピオンを取り損ねたフェラーリは2人揃って登壇。チームを去るサインツは2番手から2位、チームに残るルクレールは19番手から3位となりました。
スタート直後にやらかしたフェルスタッペンは6位入賞、やらかされたピアストリも別件でタイムペナルティが下されつつも何とか10位入賞を果たし、角田はスタートのつまずきはありましたが12位完走しています。
《ファステストラップとそのタイミング》
マグヌッセン(ハース・F)
1分25秒637 57周目/58周
《ドライバー・オブ・ザ・デイ》
ルクレール (フェラーリ・F)
《完走(扱い)台数と規定周回走破台数》
完走台数:17台(16台フィニッシュ)
規定周回:10台
ファステストラップは17台中16位と最下位完走ながらマグヌッセンが獲得。この方はデビュー戦でいきなり2位表彰台、3回目のラストランでファステストラップ獲得と、ある意味「持っている」キャラクターですね。年齢的にはまだ32歳と若いんですが、F1向きの走り方ではなかったかな。父親ヤンと同様に他カテゴリーの方が合っているかもしれません。
これからもいいパパしてね!
《miyabikunの選ぶドライバー・オブ・ザ・デイ》
ルクレール(フェラーリ・F)
コンストラクターズチャンピオンは獲れなかったけど、まさか3位表彰台を獲るまで浮上してくるとは。本家でガッチリ獲得していますが、miyabikunも一票投じます。異論無し!
スタートならびに1周目であたかもゲームみたいな走りで大飛躍していましたね。予選に強いイメージは持ちつつも、今シーズンのルクレールは1周目で強力だった印象もありました。タラレバにはなりますが、例えポールポジションでなかったにしてもいつも通りのフロントロウ、セカンドロウスタートが出来ていれば、ノリスを上回ることができていたのではないかと思いました。交換ペナルティが憎いですね。来シーズンはいよいよ7回チャンピオンのハミルトンが来ます。浮き沈みの激しいパリピではありますが、今回のレースでもわかるように依然としてタイヤの使い方が巧みで、まだまだ速さはあります。メルセデスはラッセルに託すことになっても、フェラーリでどハマりされたら生え抜きのルクレールも評価に影響が出かねません。絶対に守れよ、ミスターフェラーリの立ち位置を。
次点はルクレール同様に下位スタートから浮上し、フィニッシュ後に感傷に浸ったアクター、ハミルトン。急遽盟友を失い、最終戦のコンストラクターズ争いを託されつつもしっかりポイントを積み重ねてランキングを守ったガスリーでした。
《miyabikunの選ぶ「ザ・ワースト」》
フェルスタッペン(レッドブル・HRB)
オープニングラップのバトルは不問になるケースが多いものの、今回はしっかりタイムペナルティを食らっちゃったね、4回チャンピオン。アレはダメよ、若手の挑戦者に対してあんな走りしちゃ。だってチャンピオンだもん。決してイジワルや嫉みではない、厳しくいくよ。
今シーズンは前半の貯金も強みに何とか逃げ切ったフェルスタッペンですが、久々に「対等に並ぶライバル」が現れました。以前にハミルトンとやり合った時やルクレールとやり合った時もそう、フェルスタッペンは対等に来られると冷静ではない部分があからさまに表れるのが明らかになりました。F1のみならずスポーツマンとして競っていれば、誰しもがそんな言動を取りがち。ただ今まで何回も書いていますが、チャンピオンがライバルから挑戦状を突き付けられるのは当然ですし、それを「チャンピオンらしい立ち振る舞い」でかわして堂々と勝ってこそチャンピオンだと思います。チャンピオンだから速く強いマシンを得たり、自分好みの仕様に出来るのはあっても、他が台頭した時にスマートにかわせなければ貫禄や威厳はありませんし「フェルスタッペンが強いのはどうせ◯◯だからでしょう」という枕詞がついて回ってしまいます。4回チャンピオンは前任のベッテルと並びました。しかし今回はコンストラクターズは取り損ね、ライバルもしっかり追従してきています。コンストラクターズについてはフェルスタッペン1人に背負わせるのも酷だしやり切れない部分はあるにせよ、来シーズンはマクラーレンもフェラーリも強力でしょう。5回目が獲れるのか、5回目に相応しい走りが出来るのかに注目したいです。
《ドライバーズポイントランキング》
1 → フェルスタッペン 437pts ★
2 → ノリス 374pts(-63pts)
3 → ルクレール 356pts(-18pts)
4 → ピアストリ 292pts(-64pts)
5 → サインツ 290pts (-2pts)
6 → ラッセル 245pts(-45pts)
7 → ハミルトン 223pts(-22pts)
8 → ペレス 152pts(-71pts)
9 → アロンソ 70pts(-82pts)
10 ↑ ガスリー 42pts(-28pts)
11 ↓ ヒュルケンベルグ 41pts (-1pt)
12 → 角田裕毅 30pts(-11pts)
13 → ストロール 24pts (-6pts)
14 → オコン 23pts (-1pts)
15 → マグヌッセン 16pts (-7pts)
16 → アルボン 12pts (-4pts)
17 → リカルド 12pts (0pts)
18 → ベアマン 7pts (-5pts)
19 → コラピント 5pts (-2pts)
20 → 周冠宇 4pts (-1pt)
21 → ローソン 4pts (0pts)
- ボッタス 0pts (-4pts)
- サージェント 0pts (-4pts)
- ドゥーハン 0pts (-4pts)
《コンストラクターズポイントランキング》
1 → マクラーレン 666pts ★
2 → フェラーリ 652pts (-14pts)
3 → レッドブル 589pts (-63pts)
4 → メルセデス 468pts(-121pts)
5 → アストンマーティン 94pts(-374pts)
6 → アルピーヌ 65pts (-29pts)
7 → ハース 59pts (-6pts)
8 → レーシングブルズ 46pts (-13pts)
9 → ウィリアムズ 17pts (-29pts)
10 → キックザウバー 4pts (-13pts)
最後はレギュラー、スポットを含めた全ドライバー、全コンストラクターのポイントランキングを並べました。
ドライバーズはフェルスタッペンが4年連続4回目となるチャンピオンを獲得し、ランキング10位はヒュルケンベルグからガスリーがわずか1ポイント差で入れ替わっています。角田は30ポイントでランキング12位でした。
コンストラクターズチャンピオンは26年振りにマクラーレンが獲得、長きにわたる低迷から見事に抜け出しています。ドライバーズは獲ったレッドブルは3位に終わり、来シーズンは久々に「挑戦者」の立場から始まります。
《最終戦アブダビGPのポイント》
・チームタイトルだけは確実に獲ったノリス
・ルクレール好走も交換ペナルティが悔やまれる
・1周目からそれだけはやるなよ4回チャンピオン
・F1関係各位、ファンの皆さま、お疲れ様でした
全24戦に6スプリント、長かった。。でも近年には無かったいいバトルがみられたシーズンでもありました。今シーズンも特に決勝観戦記については相変わらず遅れが目立ちましたが、miyabikunなりには全戦同じ尺度で見解は綴ってこれたかなと思っています。お付き合いいただきありがとうございました。
にほんブログ村