仕事も家族も同時に失った「若年性認知症」の恐怖 30代の発症例も多数
「あの人の名前、なんだっけ?」「昨日の晩ご飯、何を食べたっけ?」「実家の郵便番号っていくつだっけ?」……。30~40代にもなると急激に進む記憶力の低下。「あれ」「それ」といった指示語で会話する頻度が増えるたびに、「もしかしてボケが始まっているかも」と不安になる読者も多いことだろう。
菅原脳神経外科クリニックの医師、菅原道仁氏は次のように説明する。
「64歳以下で発症する認知症を『若年性認知症』と呼びます。認知症というと高齢者のイメージがありますが、64歳以下でも認知症になるケースが意外と多くあり、近年、若年性痴呆症(若年性認知症)が増加傾向にあります。また、認知症と診断されるには5つの診断基準がありますが、早期に適切な治療を行えるよう、すべてを満たさなくても『軽度認知障害』、いわば“認知症予備軍”と診断するケースも増えています」
39歳で兆候が表れ、42歳のとき、娘に「お父さん、ボケてるんじゃないの?」と言われたのをきっかけに病院へ行ったところ、アルツハイマー型若年性認知症と診断、その直後に妻に離婚されたという太田剛さん(仮名)。当時、太田さんは大手電機メーカーの研究職で多忙を極めていた。7~8時間の睡眠と、3食の食事は規則正しく取っていたが、睡眠と食事以外の時間はほぼすべて仕事に没頭していた。
「36歳で課長職に就いて部下が60人もでき、仕事の量はもちろん、プレッシャーも急に大きくなりました。それまで新開発で特許を取ったり、研究開発部門の最前線でやってきた自負もありました。しかし、研究がなかなかうまくいかないと、評価も気になるし、研究成果が出るまで残業もしました。平日は深夜帰りはザラで、土曜も出勤して仕事をしていました」
太田さんは責任感の強い性格で、じっくり考えるタイプだという。食事中でも家族と過ごしているときでも、片時も仕事のことが頭から離れなかったという。
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