兵庫・山口シマ子さん〈核といのちを考える 遺す〉

聞き手・奥村智司
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兵庫県明石市(長崎) 山口シマ子さん(94) 映画館勤務

 (1)原爆は一瞬で多くの人を殺害し、傷つけました。この69年間、忘れることができない当時の体験、光景は何でしょうか。

 被爆した日、家の近くをさまよっていると、真っ黒の腕で右足をつかまれました。黒焦げ、半焦げの人がごろごろしているから、どの人の腕か分かりませんでした。

 「助けてー、水くれー」と声がしました。引き剝がそうとして腕をつかむと、皮がずるっとむけました。夢中で「ごめん、かんにんね」と立ち去りました。焼け跡、燃えさかる炎、火が収まって炭みたいに焼けた町。今でもその時の光景は目をつむると全部出てきます。

 (2)原爆は長い間、被爆者を苦しめ続けました。被爆してから現在まで、恐怖や不安、怒りを感じたことはなんですか。

 次から次へと、ずっと病気をしました。これからも生きている限り、病気の苦しみから逃れることはできません。それなのに、病院の受付の職員や医師からは「マルゲン」と呼ばれたこともあり、軽蔑的ないい方に心底情けなく、悔しく思いました。

 (3)原爆投下から69年がたとうとしていますが、核兵器はなくなりません。どう思われますか。次の世代を担う人たちにどんなことを伝えたいですか。

 原爆は人間を地獄に落とす兵器。あんなもん絶対使っちゃだめ。今の若い人は政治や世情について「自分には関係ない」という感じにしている人が多いようですが、日本をしっかり守るために「自分らがしっかりせないかん」と思ってほしい。

 (4)東日本大震災原発事故が起き、たくさんの人が放射能への不安を抱えて苦しんでいます。こうしたなか、原発を再び動かそうとすることをどう思われますか。

 絶対に反対です。日本は地震国。電力が足りないから他の発電で埋め合わせをしないといけませんが、原子力だけはだめ。何か起きたときに取り返しがつきません。

 (5)安倍晋三首相は自衛隊が海外の戦争に加われる国になることをめざしています。賛成ですか、反対ですか。理由も教えてください。

 戦後、日本は戦争せずにすんできましたが、米国はあっちこっちで、もめ事に首を突っ込み、結局は戦争や紛争になる。今後、米国にくっついていけば、本当に戦争に巻き込まれます。

 戦争の苦しさ、辛さの中をはいずり回ってやっとそこを通り越してきた人間として、できるだけ戦争につながることに首を突っ込んでほしくない。これはいろんな苦しみを知った人間の願いです。

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