憲法を変えない共産は「保守」? 世代で異なる文脈、対立軸はどこへ
選挙が近づくと耳にする「保守とリベラル」「右と左」という対立するイデオロギー。「あなたはどちら側?」と聞かれれば答えられなくはないけれども、その価値観の意味を明確に答えるのは案外難しい。日本社会はどちら側? そもそもこの「ラベル」に意味はあるのか。
リベラルと保守という二分化「効力を失っている」 橘玲さん(作家)
――世の中が保守化しているとよく言われます。
「日本も世界も、逆にリベラル化の巨大な潮流にのみ込まれていると私は考えています。東京五輪の大会組織委員会で騒動が続発し、女性蔑視発言や過去のいじめ、ホロコーストをネタにしたコントがあれほど炎上したのは、以前よりも日本社会が差別を容認しなくなったからでしょう」
――米国では米国第一のトランプ政権が誕生し、日本でも保守層に強く支持された安倍晋三氏が長期政権を担いました。
「保守化とされる現象は、世界的なリベラル化の潮流に対する反動、バックラッシュです。米大統領の就任式で、オバマ氏の時にはビヨンセ、バイデン氏ではレディー・ガガという世界的大スターが国歌を歌いましたが、トランプ氏は多くのアーティストに拒否されました。全世界をマーケットにする歌手にしてみれば、人種差別的と批判される大統領のためには歌えない。いまやリベラルでなければ、グローバル市場では生き残れません」
――日本では、リベラルと言えば、護憲、平和主義の野党というイメージです。
「日本で平和主義がリベラルとされるのは、敗戦の体験が強烈だったからでしょう。自主憲法を唱える右翼に対抗し、二度と戦争を繰り返さないためには憲法9条を変えてはいけないという主張に一定の支持があり、リベラル勢力と結びついてきました。これは、世界的な基準とは異なるリベラルです。最近では、安倍氏が自身の経済政策を『リベラル』と説明し、立憲民主党の枝野幸男代表が『保守』を自任するなど、政治家の切り分けも難しくなっていますが」
――そもそも、リベラルとは何だと考えていますか。
イデオロギーを示す言葉の意味が、最近わかりにくくなってきました。政治学者の遠藤晶久さんによると、保守と革新というラベルが示す政党が、ある世代を境に変わっているといいます。記事の後半で詳しく紹介します。
「リベラリズムの本質は、レ…